露光装置は、半導体の回路パターンをシリコンウェハー上に転写する装置で、いわば「超高精度のプリンター」のようなものです。AIアクセラレータ、最新CPU、高性能メモリなどの先端チップを量産するには、このEUV装置が不可欠です。
そのため、半導体メーカーが先端製造能力を拡大する局面では、最初に恩恵を受けやすいのがASML といわれます。
AIモデルの大型化やクラウドAIの普及により、データセンター向けGPUやAIアクセラレータの需要が急増しています。
これに対応するため、半導体メーカーは最先端ロジックや高性能メモリへの投資を拡大しています。
ASMLの投資家向け資料でも、AIの普及が半導体市場を長期的に押し上げ、世界の半導体市場規模が2030年までに1兆ドルを超える可能性があると示されています。
この成長は、EUVだけでなく、製造工程全体で使われる DUV(深紫外線)露光装置 の需要も押し上げる要因になります。
ASMLの次の重要な成長ドライバーが、High‑NA(高開口数)EUV露光装置です。
High‑NA EUVは、従来のEUVよりさらに細かい回路パターンを形成できる次世代技術で、2ナノメートル以下の半導体ノードの実現に不可欠とされています。
これらの装置は1台数億ドルに達する可能性があり、半導体製造装置としては史上最高レベルの複雑さを持つと言われています。
ASMLのCEOによれば、High‑NA EUV装置で製造された最初のチップは数カ月以内に登場する見込みです。
これは投資家にとって重要な意味を持ちます。
・開発段階から実際の生産段階への移行を示す
・インテルやサムスンなどの次世代ロードマップを支える
・今後10年の装置更新サイクルの始まりを示唆する
技術だけでなく、ASMLの財務実績もアナリストの見方を強気にしています。
2026年第1四半期の主な数字
・売上高:88億ユーロ
・純利益:28億ユーロ
・粗利益率:約53%(ガイダンス上限)
これを受け、同社は2026年の通期見通しを次のように引き上げました。
・売上高:360億〜400億ユーロ
・粗利益率:51%〜53%
さらに、既存装置の保守やアップグレードなどのインストールベースサービス収入も拡大しており、安定的で高利益率の収益源になっています。
現在の強気見通しは、主に次の要素の組み合わせから生まれています。
1. 技術的独占に近い地位
EUV露光装置を供給できる企業は事実上ASMLのみで、半導体産業の重要なボトルネックとなっています。
2. AIによる構造的な需要拡大
AIインフラ競争が、先端半導体への設備投資を急増させています。
3. High‑NA EUVによる新たな設備更新サイクル
次世代ノードへの移行に伴い、半導体メーカーは新しい露光装置を導入する必要があります。
4. 業績ガイダンスの改善
売上と利益率の見通しが引き上げられ、成長ストーリーに実証データが加わりました。
一部のオンライン情報では、UBSがASMLの目標株価を1,900ユーロに引き上げたとする主張も見られます。
しかし確認できる公開情報では、UBSとドイツ銀行は目標株価を約1,600ユーロへ引き上げたとされています。
この違いは重要です。ASMLの評価は過度な期待ではなく、実際の業績改善と技術進展に基づくものであることを示しているからです。
ASMLの長期ストーリーは、いくつかの大きなトレンドに支えられています。
・AIワークロードの拡大による先端チップ需要
・半導体プロセスの微細化競争
・High‑NA EUVの普及
・増え続ける装置ベースからのサービス収益
これらの流れが続く限り、ASMLは今後10年の半導体エコシステムで最も重要な企業の一つであり続ける可能性が高いと見られています。
要するに、アナリストがASMLに強気なのは単一の要因ではありません。
AIブーム、半導体技術の進化、そしてEUVという事実上の独占技術——その交差点に同社が位置しているからです。