高度なAIは、次のような分野で軍事能力を大きく高める可能性がある。
米議会では、こうした能力が米国と中国の軍事競争に直接影響すると広く認識されており、AI競争は「AI軍拡競争」とも呼ばれている。
マスト氏の懸念は企業の利益ではなく、国家レベルの戦略にある。
米国企業が中国市場で利益を得ても、中国企業が最先端のAIチップや技術にアクセスできれば、国内のAI開発を加速させたり、軍事用途に転用したりする可能性がある。
その結果、短期的には米企業が利益を得ても、長期的には中国が技術格差を縮め、米国の優位性が失われる可能性があると同氏は警告している。
こうした懸念を背景に、米議会ではAI技術の輸出規制を強化する法案も議論されている。
マスト氏が提案した「AI OVERWATCH Act」は、先端AIチップの輸出に対する議会の監視を強化し、敵対国の軍が「兵器化可能なAI」にアクセスするのを防ぐことを目的としている。
同法案は同時に、米国のAI技術を同盟国やパートナー国へ優先的に提供することも視野に入れている。
今回の議論が示しているのは、AIに対する政府の見方が大きく変わりつつあるという点だ。
かつては主に民間ビジネスの技術と見られていたAIだが、現在では国家安全保障や地政学的競争に直結する「戦略資産」として扱われるようになっている。
マスト氏にとって、AIチップは単なる半導体ではない。F‑35戦闘機のように、国家の優位性を左右する技術として厳格に管理すべき対象だというわけだ。