米財務省は、ロシア産の海上輸送原油について、期限前に積み込まれた貨物の受け取りを30日間認める一般ライセンスを発行しました。
この措置は2026年初めに導入され、今回が2回目の延長です。背景には、イラン関連の紛争やホルムズ海峡周辺の混乱によって世界の石油輸送が影響を受けたことがあります。
ホルムズ海峡は、世界の原油輸送の大部分が通過する重要な海上ルートです。そのため、ここで供給が滞ると国際市場の価格や供給に大きな影響が出ます。
米財務長官スコット・ベッセント氏は、この措置を「市場安定のための一時的な対応」と説明しました。
政府側の主な理由は次の通りです。
米政府によれば、海上で足止めされる可能性のある貨物を市場に流すことで、短期的な供給ショックを緩和することが目的でした。
しかし、この措置は西側の対ロ制裁政策との整合性をめぐり、強い批判も招いています。
EUの関係者は、ロシア産原油が市場に流れ続けることでクレムリンの収入が増え、ウクライナ戦争への資金源になる可能性があると警告しました。
欧州の指導者やウクライナ政府も以前から、制裁の例外措置がロシアへの経済的圧力を弱めると懸念を示しています。
米国内でも、議会の一部から反発が出ました。
上院議員マイケル・ベネット氏らは財務省に対し、ロシア産原油への制裁を全面的に再開するよう要求しています。彼らは、例外措置が**ロシアの戦費を支える「石油の臨時収入」**を生み出すと指摘しました。
また別の議員グループも、制裁猶予が**「プーチンの石油利益の追い風」になる**と批判しています。
今回の判断は、世界のエネルギー政策が直面する典型的なジレンマを示しています。
ホルムズ海峡危機のような地政学的ショックが起きると、各国政府は「制裁の強化」と「エネルギー市場の安定」という相反する目標の間で難しい判断を迫られます。
米政府は今回の措置について、あくまで緊急対応の一時的な措置であり、ロシア産原油への制裁を恒久的に緩和するものではないと強調しています。