arXivが問題視するのは、AIを使ったこと自体ではなく、AIの出力を確認せずに論文に含めたことが明らかなケースです。
モデレーターが挙げている例には次のようなものがあります。
こうした痕跡は、著者がAI生成結果を十分に確認していないことを示す「反論の余地がない証拠」と見なされる可能性があります。
モデレーターが未確認のLLM出力を含むと判断した場合、次のような措置が取られる可能性があります。
ポイントは、論文に名前が載っているすべての著者が責任を共有する点です。arXivのルールでは、著者として署名すること自体が、内容全体への責任を意味します。
今回の方針は、生成AIの利用を禁止するものではありません。
arXivの基本姿勢はシンプルで、AIが書いたか人が書いたかに関係なく、内容の正確性は著者が責任を持つというものです。
これは学術出版の従来の原則とも一致しています。統計ソフトや翻訳ツールと同じく、AIはあくまで補助ツールであり、最終的な検証は研究者の役割です。
arXivのモデレーション判断には、異議申し立て(アピール)手続きが用意されています。著者は、投稿の却下や分類に対して再検討を求めることができます。
ただし場合によっては、異議申し立てを検討する前提として、通常の学術誌で論文が受理されていることが求められることもあります。
今回の対応は、生成AIが研究執筆に急速に浸透する中で、学術界が直面している課題を反映しています。
AIは執筆を大幅に効率化する一方で、**架空の引用や微妙な事実誤り(いわゆる“ハルシネーション”)**を生み出すことがあります。
arXivの新しい運用方針は、そのバランスを明確に示しています。
AIの利用は問題ではない。だが、確認されていないAIの出力をそのまま論文に載せることは許されない。
この原則は、AI時代の研究倫理を象徴するルールになりつつあります。