しかし会談終了時点で、レアアース貿易や広範な経済問題についての明確な合意は発表されなかった。観測筋によれば、対話自体は前向きだったものの、半導体、AI、レアアースといった核心問題では「大きな突破口」はなかったとされる。
両国は、以前の交渉で成立していた「貿易休戦」を延長する可能性について議論したとされるが、米企業へのレアアース供給を安定的に回復させる具体的な仕組みまでは決まらなかった。
いくつかの要因が、合意を難しくしたとみられている。
中国にとって重要な交渉カード
中国はレアアース供給網で圧倒的なシェアを持つ。この優位性は、関税や半導体規制、安全保障問題など幅広い交渉でのレバレッジ(交渉力)として機能する。そのため、他分野での譲歩なしに規制を完全に緩和する動機は小さいと指摘されている。
より大きな貿易対立と結びついている
レアアース問題は単独の資源問題ではなく、米中の関税戦争やハイテク規制と密接に絡んでいる。そのため、一部の問題だけを切り離して解決することは難しい。
実際の輸出をめぐる信頼問題
米政府は輸出許可制度や通関手続きが実際の出荷を制限しないことを求めているが、会談前の報道では中国税関データが依然として出荷量の抑制を示していたとされる。
レアアース供給の不確実性は、複数の米産業に影響を及ぼしている。
防衛産業、自動車メーカー、電子機器メーカー、再生可能エネルギー設備メーカーなどは、レアアース磁石や精製素材を中国から大量に調達している。輸出許可が遅れたり出荷量が不安定になったりすると、生産ラインやサプライチェーンが停滞する可能性がある。
さらに、外交合意が実際の供給に反映されるかどうかも大きな問題になっている。企業側からは、過去の貿易合意で期待された供給量と実際の出荷状況にギャップがあるとの指摘も出ている。
この状況は、米国政府内で長年議論されてきた懸念を改めて浮き彫りにしている。つまり、中国の加工能力に依存するサプライチェーンは地政学的圧力に弱いという問題だ。
こうしたリスクを受け、米国はレアアース供給網の再構築を急いでいる。
構造的な問題として、米国は鉱山資源を持っていても精製・加工インフラが不足している。2024年時点で米国は12種類の重要鉱物で100%輸入依存、さらに多数の鉱物で50%以上を輸入に頼っていた。
この状況を改善するため、ワシントンでは複数の政策が進められている。
国内採掘・加工の拡大
国防総省や連邦政府機関が、レアアースの採掘・分離・磁石製造の国内能力拡大を支援している。
官民パートナーシップ
代表例が、米レアアース企業MP Materialsと国防総省の協力だ。カリフォルニア州マウンテンパス鉱山を中心に、米国内で磁石まで製造するサプライチェーン構築を目指している。
資金調達と投資の動員
米政府は民間投資や金融機関とも連携し、精製施設や磁石製造能力への投資を促進している。
同盟国との連携
G7などの枠組みを通じて、中国以外の地域での鉱山開発や加工能力を拡大する取り組みも進んでいる。
ただし専門家の多くは、中国の現在の支配的地位を完全に代替するには少なくとも数年から10年単位の時間が必要だと指摘している。
北京での会談は、短期的には外交的な緊張を和らげた。しかし、米中間の構造的な対立が解消されたわけではない。
レアアースは貿易政策、産業政策、安全保障が交差する問題であり、中国が供給網の主導権を握る限り、交渉の重要テーマであり続ける可能性が高い。
特に注目されるのは、2026年後半に期限を迎える現在の米中貿易休戦だ。もしそれまでに明確なルールや供給保証が合意されなければ、レアアース問題が再び関税や輸出規制の応酬を引き起こす火種になる可能性がある。
つまり今回の首脳会談は「対話継続の確認」にはなったが、重要鉱物をめぐる米中の戦略競争が終わったわけではない。