ホルムズ海峡は世界で最も重要な「エネルギーのチョークポイント(交通の要所)」の一つだ。2024年には、1日あたり約2000万バレルの石油がこの海峡を通過しており、これは世界の石油・石油製品消費の約20%、さらに世界の海上輸送による石油取引の4分の1以上に相当する 。
イランとオマーンの間に位置するこの狭い海峡を多くのエネルギー輸送が通過するため、長期間の封鎖は世界の燃料供給や海運ネットワークに直接的な影響を与える。
特にアジア諸国は湾岸地域からのエネルギー輸入への依存度が高く、影響を受けやすいとウォン首相は指摘している 。
最初に影響が現れるのはエネルギー市場だとみられている。原油の輸送が制限されれば、燃料不足と価格高騰が起き、世界的にインフレが加速する可能性がある 。
さらに問題は、インフレがエネルギーにとどまらない点だ。燃料価格や輸送費が上昇すると、肥料の生産コストや農業、食品物流にも影響が及び、食料など生活必需品の価格も上昇する恐れがある 。
湾岸地域からのエネルギー輸出に依存する国々では、供給不足が発生する可能性が高い。短期的には供給の制約により原油価格が急騰する可能性がある。
ただし価格が極端に高騰すれば、航空会社や輸送業者、製造業、一般消費者がエネルギー使用を抑えるため、長期的には需要が落ち込む可能性もある。
もしインフレ上昇と景気減速が同時に起きれば、各国の中央銀行は難しい政策判断を迫られる。
通常、インフレ抑制のためには金利を高く保つ必要があるが、同時に景気が弱まれば利上げは景気後退を深刻化させる恐れがある。こうした「高インフレ+低成長」の状態が、典型的なスタグフレーションだ。
ウォン首相は、エネルギーショックがサプライチェーン全体に波及する可能性を強調した。燃料は農業機械の稼働、肥料生産、輸送、冷蔵物流など多くの分野で不可欠だからだ 。
そのため生産コストの上昇は世界的な食料価格の上昇につながり、特に輸入依存度の高い国々の家計に大きな負担となる可能性がある。
エネルギーショックは為替市場にも影響を与えることが多い。燃料輸入に依存する国ではエネルギー輸入額が増え、貿易収支が悪化して通貨が下落する可能性がある。
一方で、エネルギー輸出国の通貨や安全資産とされる通貨には資金が流入する可能性がある。
ウォン首相は、もし混乱が長期化すれば、価格上昇、供給不足、経済活動の鈍化が重なり、1970年代の石油危機のようなスタグフレーションに近い状況が生まれる可能性があると警告している 。
さらに、世界は数カ月に及ぶ混乱に備える必要があり、状況が改善する前に圧力がさらに強まる可能性もあると述べた 。仮に海峡が再開されても、港湾の修復や機雷除去、物流網の回復などで正常化まで時間がかかる可能性がある 。
ただし、最終的な影響は複数の要因に左右される。封鎖の期間、代替輸送ルートや備蓄の活用、各国政府や中央銀行の政策対応などだ。
それでも、世界のエネルギー輸送の大きな割合が通過するホルムズ海峡が長期間機能しなくなれば、エネルギー価格、インフレ、食料供給、金融市場に至るまで、世界経済全体に広範な影響が及ぶ可能性がある 。