これだけ物流が集中しているため、市場は「実際に止まった」ことを待たずに動く。タンカーの安全通航に不安が出るだけで、原油価格には地政学リスクの上乗せ分、いわゆるリスクプレミアムが乗りやすい。Pepperstoneも、今回の米イラン緊張局面ではホルムズ海峡を通じた供給途絶リスクが原油市場の価格形成の中心になっていると指摘している 。
報じられた価格は、同じ一本の連続した時系列ではなく、別々の市場スナップショットだ。それでも方向感はそろっている。
ある報道では、ホルムズ海峡の通航安全への懸念や、米艦艇をめぐるイラン海軍の主張を受け、国際指標のブレント原油が3.8%上昇して1バレル112.30ドル、米国指標のWTIも同程度上昇して105.60ドルになったとされた 。
別の市場報道では、アジア時間序盤にブレント原油が約7%上昇して96.85ドルとなる一方、リスク回避姿勢の強まりからS&P 500先物が約0.9%下落した 。Business Insiderも、イランをめぐる紛争が再び激化する可能性を投資家が見極めるなか、原油が上昇し、米国株が下落して引けたと報じている
。
原油価格の上昇は、株式市場にいくつかの経路で効く。Pepperstoneは、エネルギー価格の上昇がインフレ期待を押し上げ、世界株に圧力をかける可能性があると説明している 。UBSも、中東での紛争が石油供給の途絶懸念を高めるなか、世界株が下落していると述べている
。
市場参加者が「エネルギー高が長引く」と見れば、燃料費や輸送費、原材料コストへの警戒が高まる。インフレが再燃すれば、中央銀行の利下げ期待や企業利益の見通しにも影響しうる。その結果、投資家はリスク資産を減らし、株式全体に売りが出やすくなる。
今回の相場を読むうえで最も大切なのは、恐怖に基づくリスクプレミアムと、実際の長期的な供給途絶を分けて考えることだ。
むしろEIAは、2025年第1四半期のホルムズ海峡を通る石油の総流量は、2024年と比べておおむね横ばいだったとしている 。Standard Charteredも、イラン紛争が資産価格に影響する主な経路は原油だとしつつ、これまでの市場への影響は限定的で、焦点はホルムズ海峡がいつ石油・ガスタンカーにとって十分安全になるかだと説明している
。
タンカーが動き続けるなら、原油高は地政学リスクの上乗せとして、緊張緩和とともにしぼむ可能性がある。一方で、安全通航が長く損なわれるなら、原油市場だけでなく株式市場にとっても、より重いショックになりやすい 。
市場のダメージが大きくなるかどうかは、次の点で判断しやすい。
ただし、相場の深刻度を決めるのは「恐怖」と「実際の流れ」の差だ。懸念だけならボラティリティはいずれ落ち着く可能性がある。だが、ホルムズ海峡の安全通航が本当に長期間妨げられるなら、その衝撃は原油市場にも世界株にもはるかに吸収しにくいものになる 。
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