これは長期的には前向きな材料だ。ただし、売上高の見通しは、需要や受注を実際の装置生産、納入、顧客による検収、そして売上計上へとつなげることが前提になる。半導体メーカーの設備投資計画を、そのまま短期のASML売上高とみなすのは早計だ。
ASMLは、2026年の約65台を基準に、Low-NA EUVの生産能力を2027年におよそ30%増やす計画だ。2028年についても追加の増強を検討しており、液浸DUVについても同様の拡大を計画している。
ロイターは、ASMLの生産能力が2027年末までほぼ予約で埋まっている可能性を報じた。 2028年についても相当量の受注があるとする報道はあるが、「2028年まで全能力が完全に埋まっている」と断定できるだけの根拠は、2027年ほど明確ではない。
この違いは投資判断で見落とせない。受注残は需要への安心感を与える一方、次の点を確認する必要がある。
生産能力の拡大は、ASMLがAI半導体の供給網におけるボトルネックになるリスクを抑える可能性がある。一方で、サプライヤー、人材、顧客側の受け入れ態勢より速く増産を進めれば、実行リスクが高まる。
一方、TSMCは約4億ドル規模ともされる高額な装置への投資に慎重で、幅広い導入を遅らせる可能性が報じられている。 つまり、技術そのものが否定されたというより、顧客ごとにプロセス設計と量産計画が異なるため、売上への貢献時期が読みにくいという問題だ。
今後注目すべきなのは、単なる技術評価ではなく、確定受注、設置の進捗、そして顧客がHigh-NA装置を量産で使う方針を示すかどうかである。
ASMLの装置は先端半導体の製造に欠かせず、強い競争優位性を持つ。そのため、投資家が高いPERを受け入れる理由はある。売上高と利益率の見通しが改善していることも、プレミアム評価を支える。
しかし、株価が1,700ドル台半ばで推移する局面では、AI関連の設備投資が続き、高い稼働率を維持し、生産能力の拡大に成功し、利益率を守り、High-NAの導入も広がるという複数の好材料が同時に織り込まれている。
アナリストの目標株価は総じて強気だが、ばらつきも大きい。MarketBeatの平均目標株価は1,970.33ドル、別のデータ提供会社では2,199.51ドルと2,195.39ドル。個別では、ウェルズ・ファーゴが2,500ドル、JPモルガンが2,400ドルを示している。
これらはさらなる上昇余地を見込む見方であり、株価の下値を保証するものではない。目標株価は投資シナリオの一つとして扱い、将来利益やキャッシュフローを使った自分の評価と切り分けるべきだ。
中国企業が液浸DUV装置を開発・生産しているとの報道もあるが、現時点の生産量はごく小さいとされる。 直ちにEUVでASMLを脅かす状況ではないものの、販売や保守サービスへの規制が強まれば、ASMLの装置売上高やInstalled Base Management収入に影響し、長期的には中国国内での代替開発を促す可能性がある。
なお、提案されているMATCH法については、最終的な規制範囲や成立可能性を判断できる十分な根拠が示されていない。投資家が確認すべきなのは、規制が拡大するか、対象となる装置やサービスは何か、そしてASMLの中国関連売上高が製品・事業別にどの程度あるかだ。
最近開示された保有状況を見ると、機関投資家の動きは大きく分かれている。Third Pointは保有株を150%増やしたと報じられ、三菱UFJアセットマネジメントも保有比率を8.6%引き上げた。一方、Deepwater Asset Managementは72.3%削減し、ドイツ銀行やCoatueによる保有削減も報じられている。
これらの取引から、ASMLの企業価値について一つのコンセンサスを読み取ることはできない。米国の13F提出書類などによる機関投資家の開示は過去の時点のスナップショットであり、ポートフォリオの調整、リスク管理、利益確定などが売買理由である可能性もある。
したがって、ファンドの売買は背景情報として見るべきで、単独の買い・売りシグナルにするべきではない。
受注の確度、増産の進捗、利益率の底堅さが確認できれば、高い株価評価を支える材料になる。一方、引き上げ後のガイダンスを単に達成するだけでは、市場の期待水準によっては十分なサプライズにならない可能性がある。
最新のガイダンス引き上げ後、ASMLの事業面は以前より強く見える。第2四半期の売上高93億ユーロと純利益29億ユーロ、2026年売上高430億〜450億ユーロの見通し、そして生産能力の拡大計画は、長期的な強気シナリオを支えている。
ただし、現在の株価水準では投資判断はより慎重になる。既存株主にとっては、ASMLという高品質な半導体製造装置企業を保有しつつ、規制や増産の進捗を見守る展開が考えられる。新規投資を検討する場合は、上昇相場を追いかけるより、分割購入やより有利なエントリー価格を待つ方が、リスクとリターンのバランスを取りやすい可能性がある。
もはや中心的な問いは、ASMLに需要があるかどうかではない。需要を適時の納入、持続的な利益率、そしてHigh-NA EUVの幅広い量産採用へ変換できるか。その一方で、中国関連の規制による影響をどこまで抑えられるかが、次の株価を左右する。