ホルムズ海峡は、世界の海上輸送による石油のおよそ5分の1が通過する重要な航路だ。この地域で混乱が起きると、世界のエネルギー市場に直ちに影響が広がる。
2026年初めにイランをめぐる衝突が激化すると、原油価格は急騰。ブレント原油は1バレル100ドルを超え、116ドルを上回る場面もあった。これに伴い、多くの国でガソリン価格が上昇した。
燃料費の上昇は、車の「総保有コスト(TCO)」を大きく変える。ガソリンやディーゼルが高くなるほど、電力で走るEVは長期的に安くなるためだ。その結果、EVは環境対策というだけでなく、**燃料価格の変動リスクに対する“ヘッジ”**としても注目されるようになっている。
IEAは、世界経済の不確実性がある中でもEV市場はさらに拡大すると見ている。
主な予測は次の通り。
これらの数字は、EVがもはやニッチ市場ではなく、世界の自動車産業の主流へと移行しつつあることを示している。
欧州では、ガソリン価格の上昇に対する反応が特に顕著だ。
2026年第1四半期、欧州のバッテリー電気自動車(BEV)登録台数は前年同期比で約30%増加し、3月だけで50%以上増えた市場もあると報じられている。
欧州自動車工業会(ACEA)のデータでも、EUのBEV登録は2025年3月比で48.9%増となった。エネルギー市場の混乱に伴うガソリン高騰が、EV需要を押し上げたとみられている。
多くの消費者が、燃料価格の上昇によって「EVへの乗り換えで元を取れるまでの期間」が短くなったと計算し直している。
アジアの多くの国は原油輸入への依存度が高く、世界的な価格高騰の影響を受けやすい。燃料費が上昇するほど、EVやプラグインハイブリッドの経済性は高まる。
中国ではすでにEV市場が急拡大しており、2025年にはEVとプラグインハイブリッドの販売が約1200万台に達し、新車販売の半分以上を占めたとされる。
原油価格の上昇が続けば、同様の経済的圧力が他のアジア市場にも広がる可能性がある。
エネルギーショックは、単一の燃料への依存リスクを浮き彫りにする。今回の危機では、次の要因がEVシフトを後押ししている。
運用コストの低さ
電力価格は原油ほど急激に変動しないことが多く、EVのランニングコストは比較的安定している。
バッテリー価格の低下
バッテリーコストは継続的に下がっており、EVとガソリン車の価格差は縮小している。これが長期的な経済性を改善している。
政府の政策支援
購入補助金、排出規制、充電インフラ投資、燃費規制など、多くの国がEV普及を支援している。燃料価格が高騰する局面では、こうした政策が普及をさらに加速させる。
ただし、現在のEV需要の急増が長期的に続くかどうかについては慎重な見方もある。
主な懸念点として挙げられているのは次の通り。
IEAも、貿易政策や補助金制度、市場環境の不確実性によって、EVが将来どれだけ石油需要を置き換えるかは変動する可能性があると指摘している。
それでも今回の原油ショックは、すでに進行していた変化を加速させている。燃料価格の高騰は、電動化された輸送の戦略的メリット—運用コストの低さ、輸入石油への依存低減、エネルギー価格の変動への耐性—を浮き彫りにした。
IEAの予測が現実になれば、2026年には世界の新車のほぼ3台に1台が電気自動車になる。これは、自動車産業の歴史の中でも最も速い技術転換の一つになる可能性がある。