折りたたみスマホは2026年も拡大が続いている。ただし、一般的なスマートフォンを近く置き換える段階に入ったわけではない。市場で起きている重要な変化は、カテゴリーの内側にある。タブレットのような大画面を開ける「ブック型」が、縦に折るクラムシェル型からシェアを奪い、大手メーカーの高価格帯投資を集めているのだ。1015
Appleの参入が実現すれば、折りたたみスマホをより幅広いユーザーに知らしめる可能性がある。一方、初期モデルは高価で、供給も限られるとみられている。現時点のデータが示すのは、競争の激しいプレミアム市場の拡大であり、スマホ市場全体が折りたたみ端末に置き換わる兆しではない。
成長の中心はブック型へ
ブック型は、本のように左右へ開くタイプだ。閉じた状態では通常のスマホに近いカバーディスプレイを使い、開くとより大きな内部画面が現れる。強みは携帯性よりも、複数アプリの同時利用、文書作成、読書、動画視聴などをタブレットに近い画面で行える点にある。
Counterpointは、ブック型が2026年の折りたたみスマホ出荷の約65%を占めると予測している。2025年の52%から大きく伸びる計算だ。15 別のCounterpoint予測ではシェアは76%に達する可能性があり、Omdiaの2026年上半期データでもブック型は69%を占めた。101
これらは対象期間や調査手法が異なるため、数字をそのまま比較することはできない。ただし方向性は一致している。2026年の成長を支えるのは、単に折りたためる端末全般ではなく、横幅のある大画面ブック型である。
Omdiaの上半期データからは、メーカー間の競争も見えてくる。ブック型の世界出荷シェアはHuaweiが57%、Samsungが18%、HONORが9%、OPPOが7%、vivoが6%だった。4 Samsungは折りたたみスマホ市場全体で依然として有力だが、ブック型という一部カテゴリーでは、もはや単独で市場を支配しているわけではない。
Galaxy Z Fold8は「閉じたときも普通のスマホ」に近づいた
SamsungのGalaxy Z Fold8は、ブック型をより一般的なスマホに近づける方向を打ち出している。カバーディスプレイは5.5インチ、アスペクト比は10:16。内部ディスプレイは7.6インチ、4:3の比率だ。閉じた状態でも外側の画面を使いやすくし、開いたときにはマルチタスクや映像向けの横幅のあるキャンバスを確保する設計である。1822
チップセットには、Qualcommの「Snapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxy」を採用。ストレージは256GB、512GB、1TBから選べる。22 Samsungが公表するバッテリー容量は4,800mAhで、独立系の仕様情報では、256GBと512GBモデルが12GBのRAM、1TBモデルが16GBのRAMを搭載するとされている。1819
米国価格は、折りたたみスマホが高級品であることを改めて示す。
- 256GB: 1,899.99ドル
- 512GB: 約2,099.99ドル
- 1TB: 約2,499.99ドル1721
展開時の厚さは4.5mm、重量は201g。Galaxy Z Fold8はSamsung史上最軽量のGalaxy Z Foldとなった。1719 厚みと重さというブック型の長年の弱点には改善が見られるが、端末価格が高いという根本的な問題は残っている。
Galaxy Z Fold8単体について、現時点では販売の成否を判断できる十分な出荷データは公開されていない。より確かな手がかりは市場全体の予測だ。Counterpointは、Samsungが2026年も32%のシェアで最大の折りたたみスマホメーカーになると見込む。ただし、Huawei、HONOR、Appleの競争が強まるため、2025年の40%からは低下する見通しだ。11
HONOR Magic V6は薄さと軽さで差別化
HONOR Magic V6は、同じブック型市場に別の角度から挑む。訴求点は画面の大きさだけではなく、手に持ったときに通常の板状スマホに近い感覚を目指した薄型・軽量設計だ。
グローバルモデルの厚さは、ホワイト仕上げの場合、折りたたみ時で8.75mm、展開時で4.0mm。重量は約219gとなっている。カバーディスプレイは6.52インチ、内部ディスプレイは7.95インチで、いずれも最大120Hzの可変リフレッシュレートに対応する。53
主な仕様として、Snapdragon 8 Elite Gen 5、最大16GBのRAM、欧州モデルで512GBのストレージ、約6,600mAhのバッテリー、50MP・64MP・50MPの背面カメラ構成が報告されている。495456
HONORは6月に同モデルをグローバル展開し、欧州での価格は英国が1,999.99ポンド、ユーロ圏が2,299.99ユーロとされる。5356 ハードウェア面では有力な競合だが、一般的なフラッグシップスマホより手頃な選択肢というわけではない。
ここには、折りたたみスマホ市場の現在の矛盾が表れている。メーカーは薄さ、軽さ、バッテリー容量、耐久性を改善している。それでもブック型は、依然として超高価格帯に位置しているのだ。
折りたたみiPhoneは市場を広げるのか
Appleは、折りたたみiPhoneを正式発表していない。そのため、報道やアナリスト予測は、確定した仕様や価格とは分けて見る必要がある。
現在のうわさでは、本のように開くブック型で、展開時の画面は約7.8インチになるとされている。2026年9月、iPhone 18 ProおよびiPhone 18 Pro Maxと同時に発表される可能性があるが、製品名、仕様、販売地域、発売時期はいずれも未確定だ。333947
価格予測には幅がある。開始価格を1,800〜2,000ドル付近とする見方がある一方、2,000〜2,500ドルとする予測もある。現時点で比較的妥当な結論は、正確な価格を断定することではなく、Apple初の折りたたみiPhoneが多くの予測で2,000ドルを超える高価格帯になるという点だ。39
初期供給も制約要因になりうる。ある報道では、2026年のサプライヤー出荷は約700万〜800万台と見積もられている。需要が強くても、市場によっては生産量の少なさが入手性を左右する可能性がある。33 一方で、より高い生産目標を報じる情報もあり、供給見通しはまだ固まっていない。
Appleの影響は、初年度の販売台数だけでは測れない。折りたたみiPhoneが登場すれば、iPhoneユーザーにブック型という選択肢を広く認知させ、アプリ開発者がタブレットに近い横長画面へ対応するきっかけになる可能性がある。Counterpointは、Appleが参入初年度に折りたたみスマホ出荷の25%を獲得すると予測しているが、これはあくまで予測であり、実績ではない。11
出荷台数は大きく伸びても、まだニッチ市場
調査会社によって市場規模の予測は異なるものの、折りたたみスマホが小さな基盤から成長しているという点では一致している。Counterpointは、2026年の世界出荷が前年比21%増えると予測している。911 Omdiaも2028年まで年20%超の成長を見込み、出荷台数は約3,600万台に達するとしている。56
基準となる2025年の数字にも差がある。Omdiaは折りたたみスマホの出荷を1,820万台と記録し、Analytics Insightが引用したIDCの推計は2,060万台だった。62 市場予測を読む際は、数字を完全に同じ基準で比較するのではなく、成長の方向性を見る必要がある。
Omdiaは、2030年の出荷が約4,500万台に近づくと予測している。それでも世界のスマートフォン出荷に占める割合は3%未満にとどまる見込みだ。7 つまり、台数が2倍以上になっても、スマホ市場全体では専門性の高いカテゴリーであり続ける可能性がある。
なぜ主流化が難しいのか
最大の壁は「価格に見合う価値」だ。ブック型はスマホと大画面の生産性を一台にまとめられるが、現在の主要モデルはおおむね1,800〜2,500ドル。購入時の負担に加えて、折りたたみ機構に伴う耐久性への不安、修理費、画面の折り目、追加画面を十分に生かせないソフトウェアも考慮しなければならない。
薄さと重量は確実に改善している。Galaxy Z Fold8は201g、HONOR Magic V6は約219gで、一般的な高級スマホとの差は縮まりつつある。171953 しかし、ハードウェアが洗練されたからといって、消費者が大画面のフラッグシップスマホとタブレットの組み合わせではなく、折りたたみ端末を必要とすることが証明されたわけではない。
ニッチ市場を超えるために必要な条件は、明確だが実現は簡単ではない。
- 本体価格と修理費の引き下げ
- ヒンジとフレキシブルディスプレイの長期信頼性向上
- バッテリー容量を犠牲にしない薄型・軽量化
- 充実した下取り・保険・修理プログラム
- 仕事、コミュニケーション、エンターテインメントで大画面を不可欠にするソフトウェア
Appleの参入は、認知度や開発者の対応を加速させる可能性がある。ただし、予想価格が高いことを考えると、初代の折りたたみiPhoneは手頃さを広げるより、当面はカテゴリーのプレミアム化を強める可能性が高い。
2026年時点の結論
2026年の折りたたみスマホ市場は、より幅広いブック型へと進んでいる。Galaxy Z Fold8、HONOR Magic V6、そして登場がうわさされる折りたたみiPhoneは、いずれもこの方向性を後押しする存在だ。今後の成長を支えるのは、単に珍しい機構を備えた端末ではなく、開いたときに本当に作業領域が広がるスマホだろう。
一方、現在の予測は、2028年や2030年までに折りたたみスマホが標準的なスマホの座を奪うことを示していない。年間数千万台規模へ伸びる可能性はあるが、世界のスマートフォン市場では3%未満にとどまる、成長著しいプレミアムニッチという姿である。57
次の段階で問われるのは、メーカーが端末を折りたためるかどうかではない。開いた大画面を、十分に便利で、十分に丈夫で、十分に手の届く価格にできるかどうかだ。