AIグラスは、もはや一部の実験的な製品群だけではない。Counterpoint Researchによると、2026年上期の世界出荷は前年同期比263%増となった。ただし、この急拡大を「ARグラスの本格普及」と捉えるのは早い。出荷の**96%**は、視界にデジタル映像を重ねて表示しないディスプレイ非搭載モデルだった。
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現在の市場を動かしているのは、カメラ、マイク、スピーカー、AI機能を備えながら、見た目と装着感は一般的な眼鏡に近い製品である。
売れているのは「表示なし」のAIグラス
ディスプレイ非搭載のAIグラスが出荷のほぼすべてを占めた背景には、AR表示機構を持つ製品より軽く、構造も比較的シンプルであることがある。ハンズフリーでの撮影、音声、AIアシスタントといった機能を追加しつつ、通常の眼鏡に近い使い方を保ちやすい。
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このカテゴリーで圧倒的な存在感を示したのがMetaだ。Metaはディスプレイ非搭載AIグラスの出荷で推定**94%**のシェアを獲得した。Ray-Banとの提携モデルと自社ブランド製品を通じ、眼鏡として受け入れられやすいデザイン、流通網、AIプラットフォームを組み合わせたことが強みになっている。報道によると、Metaの同カテゴリーの出荷は前年比260%増だった。
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市場規模の数字は、調査会社ごとの定義や追跡手法によってそのまま比較できない点には注意が必要だ。Omdiaは2026年上期のAIグラス総出荷を420万台、前年比127%増と推計し、MetaのAIグラス全体におけるシェアを81.3%としている。それでも、いずれの推計もMetaが明確な首位であることを示している。
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AR表示モデルは急成長中、ただしまだニッチ
視界内に情報を表示するディスプレイ搭載AR/AIグラスは、2026年上期に前年比449%増となった。成長率だけを見れば市場全体を上回るが、出荷の構成比は残る4%にとどまる。小さな出荷基盤から伸びている段階だ。
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この分野では、Rokid、Even Realities、Alibaba、INMOなど、中国系企業が商用化を前進させている。関連する市場報道では、中国がAR/AIグラス出荷の45%を占めたとされる。中国は部品調達と電子機器製造の集積地であると同時に、多様なハードウェア構成を試す市場としての役割も強めている。
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光学部品、ディスプレイ、カメラ、音響部品を含む供給網への近さは、製品を短いサイクルで改良するうえで実務的な利点となる。一方、ディスプレイ搭載モデルは、価格、重量、電池持ち、明るさ、画質の間で大きなトレードオフを抱える。急成長しているからといって、製品として成熟したとは言えない。
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Metaの独走でも、競争はこれから広がる
Metaの優位は、市場の勝敗が決まったことを意味しない。Counterpointは、Meta、Google、Samsung、Appleによる投資と競争の強まりを見込んでいる。
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後発企業にとって重要なのは、カメラやAIアシスタントを単に追加することではない。利用者が日常的に掛けたくなる外観と装着感を実現し、音声操作などで確かな利便性を提供できるかが鍵になる。AIアシスタント、音声UI、OS、アプリやサービスとの連携といったプラットフォームも、ハードウェア仕様と同等かそれ以上に重要になり得る。
Appleについては、ディスプレイ非搭載スマートグラスを検討しており、2027年ごろの製品化の可能性を報じる情報もある。ただし、計画や時期は確認されたものではない。
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コストとプライバシーが普及の試金石に
出荷の急増は、この製品カテゴリーが抱える難題を解消したわけではない。Counterpointは部品コスト上昇を課題として指摘している。特にディスプレイ搭載製品では、光学系、ディスプレイ、プロセッサー、バッテリー、低消費電力センサーに高い性能が求められる。
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カメラ付き眼鏡では、プライバシーも同じく重大な論点だ。周囲の人が「いつ撮影・録音され得るのか」を把握できること、そして無断・隠し撮りを抑止する信頼できる仕組みをブランド側が用意できることが、社会的な受容性を左右する。技術が十分に機能していても、この不安が普及の壁になり得る。
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次の焦点は「エージェント型AI」
業界が中長期で目指すのは、単発の質問に答えるだけでなく、音声と周囲の状況を手掛かりに利用者の行動を支援する「エージェント型AI」だ。Counterpointは、AIエージェントを統合したソフトウェア、OS、音声インタラクション、超低消費電力コンピューティングの進化が、より能動的で文脈を踏まえた体験を後押しするとみている。
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しかし、こうした製品が本当に役立つには、正確さ、応答速度、電力効率、そして何を認識し何を実行するかの透明性が必要になる。それらが満たされるまでは、目立つARヘッドセットを求めず、AIや撮影機能を自然に使える軽量なディスプレイ非搭載AIグラスが、最も強い短期的な市場価値を持つだろう。
2026年上期は、AIグラスへの需要が実証された時期ではあるが、市場が成熟した時期ではない。Metaは量販市場の型を作り、中国勢は規模の小さいAR表示領域を押し進めている。次の勝者は、AIの能力を「信頼でき、手が届き、日常で掛けたい」と思える製品へ落とし込める企業になりそうだ。