この緊急事態を受け、リオデジャネイロで6月6日から8日に開催された国際航空運送協会(IATA)の第82回年次総会では、1500人以上の航空会社CEOや政府関係者が集結。燃料コストの抑制、ネットワークの強靭化、長距離運賃の恒常的高止まりリスクが主要議題となった。
2026年2月28日、米国とイスラエルはイランの軍事施設、核施設、指導部を標的とした共同空爆を開始した。初動で最高指導者ハメネイ師が死亡
。イランは報復として中東全域にミサイルとドローン攻撃を行い、ホルムズ海峡を航行禁止区域に指定
。船舶交通は即座に崩壊し、同日夕までに7割減、最終的には9割以上減少した
。
エミレーツ航空:6月の運航を最大16%削減し、約48万~50万席を市場から引き上げ。予定していた便の約6分の1をカットした計算だ。地域の燃料供給網に依存する中東ハブ空港は、特に深刻な打撃を受けている
。
エア・カナダ:1日38便運航するニューヨーク線のうち4便を、6月1日から10月25日まで運休。グアダラハラ~モントリオールの国際線計画を一時停止し、フォートマクマレー~バンクーバーの国内線も廃止。燃料費が2倍になったことで「収益性の低い路線はもはや経済的でない」と広報担当者は述べている。
ジェット燃料価格が紛争前から約2倍に跳ね上がり、各社は運賃値上げや燃油サーチャージでコストを転嫁している。アジア、オセアニア、欧州の航空各社が相次いでサーチャージを導入。エールフランスとKLMは、アジア・アフリカ・中東路線の長距離往復に100ユーロ、北米路線に70ユーロを上乗せした
。
価格高騰に加え、欧州では物理的な燃料不足が現実味を帯びている。空港国際評議会(ACI)は4月、EUの担当欧州委員に書簡を送り「3週間以内にホルムズ海峡が全面再開されなければ、欧州の空港は構造的なジェット燃料不足に陥る」と警告した。ゴールドマン・サックスの分析では、欧州の在庫は6月にIEAの「危機ライン」である23日分を割り込み、夏季の旅行需要が3月比で4割増となるタイミングで供給不足に陥る見通しだ
。
ライアンエアーも今春、取引先が保証できる燃料供給は5月分までと表明。アナリストは、航空各社が減少する燃料在庫をやりくりする中で、6月までに欧州~アジア路線の輸送力が30~50%削減されると予測している
。
混乱は燃料費と欠航だけにとどまらない。航空各社は紛争地域や閉鎖された中東空域を迂回するため、より長い迂回ルートを飛行せざるを得ず、燃料消費と運航コストをさらに押し上げている。新造機の納入も、部品や燃料のサプライチェーン混乱で遅延している
。もともと供給が逼迫していた持続可能な航空燃料(SAF)の不足はさらに深刻化し、航空業界の気候変動目標達成にも暗雲が垂れ込めている
。
リオデジャネイロで開催されたIATA第82回年次総会では、イラン戦争と燃料危機が1500人の参加者の議論を支配。燃料コスト抑制、ネットワークの強靭化、運賃戦略に焦点を当てたセッションが相次いだ。ホルムズ危機が世界の航空経済を構造的に変化させれば、長距離運賃が「恒常的に高い」時代に突入するリスクも、中心的な懸念事項として浮上している
。
たとえ停戦合意が成立しても、迅速な緩和は期待できないとアナリストは警告する。関係者の間では「損傷した中東の製油所能力の回復と供給網の正常化には数か月を要する」との見方が大勢だ。最も楽観的なシナリオでも、海峡再開後に数か月かけて徐々に正常化していく展開。最悪の場合、燃料在庫の逼迫と夏の旅行ピークが重なり、連鎖的な欠航と欧州での地域的な燃料割り当てが現実化する。
データが示す旅行者へのメッセージは明確だ。便数は減り、運賃は上がり、夏季の需要ピークが先細る燃料在庫と衝突する中で、土壇場での欠航が現実味を帯びている。
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