AIインフラの増強で必要になるのは、最先端GPUや広帯域メモリー(HBM)だけではありません。GPU、メモリー、ストレージ、ネットワークを安定して動かすためには、大量の電源管理・制御・接続用半導体も必要です。こうしたチップの多くは成熟プロセスや特殊プロセスで生産されます。
AIサーバー向けの需要がそれらの生産能力を吸収し、同時にメモリー供給も締まることで、データセンターの「脇役」だった部品と、スマートフォンの価格・供給にまで影響が現れ始めています。
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逼迫の中心は成熟プロセスと特殊用途のチップ
消費電力の大きいAIサーバーでは、プロセッサー、メモリー、ストレージ、ネットワーク機器の周囲に、電力を変換・安定化する回路が数多く必要になります。そのため、電源管理IC(PMIC)や管理・電源関連部品の需要が増えます。
TrendForceの情報を引用した報道によると、特に8インチのBCDプロセス(電源・アナログ系に使われる製造技術)の能力制約が焦点です。PMICの納期は約21〜26週から約35〜40週へ延びているとされます。
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これらは必ずしも最先端の微細化チップではありません。しかし、アナログIC、電源管理IC、表示ドライバーICには成熟プロセスの供給が不可欠で、最先端ロジックの増産で簡単に代替できるものでもありません。そのためAIサーバー向けの需要は、民生機器、産業機器、通信機器、自動車向けの買い手と、同じ特殊な生産ラインを取り合う構図になります。
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重要なのは、これを「すべての半導体が一様に不足している」と受け取るべきではない点です。ある市場見通しでは、成熟ロジック全般の納期は16〜26週へ改善し、価格は横ばいから下落とされる一方、特定のPMIC群は逼迫していました。部品の種類、製造プロセス、パッケージ、顧客の認定要件によって需給は大きく異なります。
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ファウンドリーの値上げは一律ではない
「5〜20%の値上げ」という幅は、業界全体に共通する一律の上昇率ではありません。各社・各プロセス・各契約で調整幅は異なります。
- TrendForceによると、SMICは一部プロセスで約10%値上げし、Vanguard International Semiconductor(VIS)は約4〜8%の引き上げを検討していると報じられました。
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- UMCは2026年後半のウエハー価格調整を予定しているとされ、先行報道では約10%の引き上げが示唆されました。ただし、同社は全品目共通の引き上げ率を開示していません。
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- Counterpoint Researchは、SMICの連続的な値上げによって8インチ成熟プロセスの価格が累計10〜20%上昇し、UMCは特殊プロセスで8〜12%を目標としていると報告しました。
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- Nexchipは8インチファウンドリー価格を10%引き上げたとされ、2026年上期の8インチファウンドリー全体では平均5〜15%の上昇と報じられています。
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共通するのは、電源関連や特殊プロセスなど、需要が強い分野で価格決定力が戻っていることです。すべての旧世代プロセスが、過去の世界的な半導体不足時のような値付けに戻ったわけではありません。
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PSMCの値上げが示す「二重の圧力」
Powerchip Semiconductor Manufacturing Corp.(PSMC、力積電)は、市場の変化を端的に示す例です。同社は7月、DRAM価格を45%引き上げ、電源管理チップと表示ドライバーチップの価格も10〜15%上げると発表しました。構造的な供給不足は2027年まで続く可能性があるとも述べています。
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年初からは表示ドライバーにも別途値上げを実施しており、12インチ生産分を30%、8インチ生産分を15%引き上げたとしています。理由は供給不足です。
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この動きは、エレクトロニクスのサプライチェーンにおける2種類の圧力を結び付けます。
- メモリー:AIコンピューティングとクラウド投資がDRAMの供給能力を押さえる。
- 成熟プロセスの周辺チップ:AIアクセラレーターを組み込むシステムには、8インチや特殊な成熟プロセスで作られる電源・制御チップが欠かせない。
両方が同時に逼迫すれば、機器メーカーは基幹部品であるメモリーだけでなく、充電、表示、電源制御、各種管理に必要な部品でもコスト上昇に直面します。
なぜスマホにも影響が見え始めたのか
IDCは、2026年のスマートフォン市場見通しを大幅に悪化させた主因としてメモリー危機を挙げています。世界のスマホ出荷台数は前年比16.7%減の10億台強となり、同社の記録上で最も大きな年間減少になる見通しです。一方で平均販売価格(ASP)は27.6%上昇し、581米ドルに達すると予測しています。市場規模は6.3%増の6,130億米ドルと見込まれており、数量の増加ではなく価格上昇が市場価値を支える構図です。
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DRAMやNANDの確保が難しくなったり価格が上がったりすると、スマホメーカーの選択肢は限られます。
- 部品表(BOM)コストの上昇を吸収し、利益率を下げる
- 店頭価格を引き上げる
- 利益率が高いモデルに部品を優先配分する
- 製品仕様や調達先を見直す
確認できるのは、広範なコスト圧力の存在です。一方、特定の国における価格上昇率や、プレミアム機のBOMに占めるメモリー比率などの数字は、独立した根拠がない限り市場固有の推計として扱う必要があります。
低価格スマホは特に影響を受けやすいと考えられます。メモリーや電源部品の価格上昇を吸収する余地が小さいためです。韓国の報道では、2026年第2四半期に100米ドル未満のスマホ出荷が前年同期比で約60%減ったとされ、世界的なスマホ価格上昇と並行して超低価格帯が縮小している様子が示されています。
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供給改善に時間がかかる理由
最も逼迫するカテゴリは、特定の製造技術と生産ラインに依存するため、短期間で解消しにくい性質があります。TrendForceの報道では、AI向け電源管理部品への需要が続く一方、一部の8インチ能力が減少しており、稼働率の上昇と価格調整を支える要因になっているとされています。
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メモリー価格も高止まりしています。TrendForceの調査としてTom’s Hardwareが報じた予測では、2026年第3四半期の通常DRAM契約価格は前四半期比13〜18%、NANDは10〜15%上昇する見通しです。第2四半期に報じられた約60%の上昇からは鈍化するものの、依然として大幅な伸びです。
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したがって、現時点での妥当な見方は慎重なものになります。PSMCが予測するように、DRAMと特定の成熟プロセス製電源・表示部品の逼迫が2027年まで続く可能性はあります。
18 ただし、2028年以降まで不足が続くことは確立した事実ではありません。AIインフラ投資、メモリー生産の配分、ファウンドリーの設備判断、スマホ・自動車・産業機器の需要によって左右されます。
今後見るべき指標
「半導体不足」という一言より、次の指標を追う方が実態をつかみやすくなります。
- PMICの納期:約35〜40週の水準が続くなら、AIサーバーの電源インフラにかかる圧力が続いているシグナルです。
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- 8インチ・特殊プロセスの稼働率:多くの電源・表示関連部品に直結する能力です。
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- DRAM・NAND契約価格の方向:メモリー高はサーバーとスマホの双方のコストに直接波及します。
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- スマホの製品構成と価格:IDCが予測する「出荷減・平均価格上昇」は、コスト転嫁の見えやすい尺度です。
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AIブームは、最先端プロセッサーの需要だけを増やしているわけではありません。電力供給、メモリー、成熟プロセスの支援チップを戦略的な制約要因へ変え、その影響はデータセンターの外側、スマートフォンの売り場にまで及びつつあります。