ユーザーは声で「もっと落ち着いた曲にして」などと指示でき、AIがリアルタイムで選曲を変更する。
こうした機能によりSpotifyは、単なる検索やランキングではなく、会話型の音楽体験へと進化している。
SpotifyがAIを活用しているもう一つの分野がオーディオブック制作だ。
同社は音声生成AI企業ElevenLabsと提携し、AI音声で朗読したオーディオブックの配信を受け入れている。
さらに「Spotify for Authors」では、AIを使ってオーディオブックを制作できるツールも導入されている。
AIナレーションには次のような利点がある。
ElevenLabsの技術では29言語で自然な音声を生成できるとされており、これによりインディー作家でもオーディオブックを制作しやすくなる。
Spotifyにとっては、オーディオブックの供給を増やすことで、アプリ内の「話し言葉コンテンツ」を拡大する狙いがある。
Spotifyは音楽制作の領域にもAIを広げている。
2026年には**Universal Music Group(UMG)**と契約を結び、ユーザーがAIを使って
を作れる仕組みを導入すると発表した。
この機能はSpotify Premium向けの有料アドオンとして提供される予定で、AIで生成された楽曲でも元のアーティストや権利者に収益が分配される仕組みになる。
ストリーミングサービスが自社のカタログ上でAI生成音楽を正式にライセンス化して扱う試みとしては、かなり大きな動きだ。
Spotifyはここで、リスナーを単なる消費者ではなく音楽制作の参加者に変えようとしている。
SpotifyはAIを使った新しい音声フォーマットも試している。
その例が、年間まとめ企画「Spotify Wrapped」で導入されたAI生成ポッドキャストだ。ユーザーの年間リスニングデータをもとに、2人のAIホストが解説する音声番組として提供された。
このような機能は、Spotifyが目指す方向性を象徴している。
つまり、同じ番組を全員が聴くのではなく、**ユーザーごとに内容が変わる“パーソナル音声コンテンツ”**を作るという発想だ。
こうしたAI戦略は革新的だと評価される一方で、いくつかの懸念も指摘されている。
まず挙げられるのがアプリの複雑化だ。
Spotifyは音楽、ポッドキャスト、オーディオブックに加えてAI機能を急速に追加しており、「機能が増えすぎてアプリが分かりにくくなっている」という指摘もある。
また、アルゴリズム推薦やプロモーションが増えすぎた結果、目的の音楽にたどり着きにくいというユーザーの不満も報じられている。
さらに、AIコンテンツが増えることで次のような問題も懸念されている。
とくにインディーアーティストにとっては、すでに競争が激しいアルゴリズム推薦の中で可視性がさらに下がる可能性があると指摘されている。
SpotifyのAI戦略は、明確な賭けでもある。
同社が目指しているのは、単なる配信サービスではなく、**「参加型オーディオプラットフォーム」**だ。
AIを使えば
可能性がある。
一方で、機能やコンテンツを増やしすぎれば、Spotifyが成功した理由でもあるシンプルな音楽体験を損なう恐れもある。
Spotifyが本当に「Everything‑Audio」プラットフォームになるのか。それとも機能過多で迷走するのか――その結果は、AIと音楽体験のバランスをどう取るかにかかっている。