クアンタの場合、この基盤としてSiemens Xceleratorが使われる。研究開発拠点と世界各地の製造拠点をつなぎ、エンジニアリングデータと生産現場の情報を共有できる環境を構築する。
その結果、世界中のチームが同じ製品データを参照しながら開発と生産を進められるようになり、グローバル生産のスピードと予測性を高めることが狙いだ。
今回のデジタルスレッドは、Siemens Xceleratorの複数のアプリケーションで構成されている。
Polarionは要件管理や仕様管理を担うALM(Application Lifecycle Management)プラットフォーム。製品の要件、仕様変更、開発プロセスを初期段階から管理する。
要件と設計データを紐づけることで、開発途中の変更がどこに影響するかを追跡できるようになる。
Teamcenterは製品ライフサイクル管理(PLM)の中核。機械設計や電子設計データ、製品構成、BOM(部品表)などを管理する共通リポジトリとして機能する。
これにより、設計チーム、サプライヤー、生産計画チームが同一の製品定義を共有できる。
Process Simulateは、実際の生産を開始する前に製造工程をデジタル上で検証・最適化するツールだ。
組立工程、工場レイアウト、ロボット動作などを仮想空間で検証できるため、量産前にボトルネックや設計問題を見つけることが可能になる。
Teamcenter Qualityは品質管理プロセスをPLM環境に統合するソリューションで、不適合管理や原因分析、コンプライアンス文書などを管理する。
特に自動車向け製品では、国際的な品質規格IATF 16949への対応が求められるため、このような品質トレーサビリティの統合が重要になる。
これらのツールは、製品開発の各段階を次のようにつなぐ。
この構成により、コンセプトから量産までの情報が一つのデータ基盤で循環する。システム間の手動データ移行が減り、エラー削減や設計変更への迅速な対応が可能になる。
クアンタの取り組みは、シーメンスが進めるデジタルツインと産業AIの戦略とも密接に関係している。
デジタルツインとは、製品や工場の仮想モデルを作り、実際に作る前にシミュレーションや最適化を行う技術だ。物理モデルと実データを組み合わせることで、性能予測や問題検出を早期に行える。
シーメンスはさらに、AIを組み合わせたツールの開発を進めている。例えばDigital Twin Composerは、シミュレーション、エンジニアリングデータ、実世界の運用データを統合し、大規模な産業システムの意思決定を仮想空間で行えるようにする技術として発表された。
クアンタにとってデジタルスレッドは、特に高度化する電子機器や自動車関連システムに対応するうえで重要だ。
これらの分野では
といった要求が強く、従来の分断された開発環境では管理が難しい。
統合されたデジタルプラットフォームにより、クアンタはこうした複雑性を管理しながら、グローバル顧客向け製品の開発スピードを高めることを目指している。
今回のクアンタとシーメンスの協業は、製造業全体で進む大きな潮流を示している。現在、多くの企業が
といった技術に投資し、設計と工場運営をソフトウェアで統合しようとしている。
製品の複雑化と開発スピード競争が激化するなか、設計・シミュレーション・製造・品質を一体化するプラットフォームは、コンセプトから量産までの時間を短縮する重要な基盤になりつつある。