MediaTekは、スマートフォン向けSoCで培った設計・統合力を、端末内でAIを処理するPCと、データセンター向けカスタムAIアクセラレーターへ広げようとしている。その具体性を増しているのが、NVIDIAとの連携拡大、新しいノートPC向けチップ、そしてTSMCの先端プロセスへのアクセスだ。
ただし、データセンター事業で語られる大きな数字には、会社側の目標や市場シェア目標も含まれる。受注・実現済みの売上と同一視しないことが重要だ。
データセンターでの狙い:NVIDIAの基盤につながるカスタムAIチップ
NVIDIAはMediaTekが発行する転換社債に35億ドルを投資した。両社は、エッジからクラウドまでのAIコンピューティングで協業を深めており、MediaTekは顧客がカスタムAIチップを開発する際にNVIDIAのNVLink Fusionを提供する。
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ここで重要なのは相互運用性だ。ASIC(特定用途向け集積回路)であるカスタムアクセラレーターは、個別のクラウド事業者の用途に合わせて設計できる。一方、実際のAIシステムでは高速インターコネクト、メモリー、ソフトウェア、サーバーまでを含む構成に組み込まれなければならない。NVLink Fusionは、パートナーが設計したプロセッサーを、NVIDIAのデータセンター基盤と統合することを狙う。
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つまりMediaTekは、大規模クラウド事業者に対し「用途特化シリコンを設計しつつ、NVIDIA中心のラック規模インフラに接続できる」という提案をしやすくなる。NVIDIAにとっても、カスタムチップの導入を自社プラットフォームと接続した状態に保つ意味がある。
2026年見通しと2027年目標:確定売上と混同しない
MediaTekは当初、2026年のデータセンターASIC売上を10億ドル超と見込んでいたが、その後、見通しを20億ドル超へ引き上げた。
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Reutersによると、同社は2027年のカスタムAIチップ市場規模の推計を800億ドルに引き上げ、その市場での目標シェアも**15〜20%**に引き上げた。
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単純計算では、800億ドルの15〜20%は120億〜160億ドルに相当する。しかし、これはMediaTekの正式な売上予測や契約済み売上ではない。市場規模の推計とシェア目標の双方が達成された場合に導かれる潜在額だ。
同社はまた、米国のハイパースケーラー顧客向けとなる最初のAIアクセラレーターASIC案件について、生産計画は順調に進んでおり、確保済みの生産能力を前提に2027年には数十億ドル規模へ拡大し得るとしている。
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ロードマップには根拠がある一方、実現には顧客需要、製造能力、製品の実行力、カスタムシリコンの採算性が左右する。
PC市場への進出:ファンレスGooglebook向け「Dimensity CX C10 Max」
もう一つの拡張先がPCだ。Dimensity CX C10 Maxは、MediaTekの新しい「Dimensity Compute Experiences(CX)」ファミリーの第1弾で、プレミアムかつ超薄型のGooglebookノートPC向けに設計されている。
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TSMCの3nmプロセスで製造されるこのSoCは、8コアの「All Big Core」CPU、11コアGPU、第8世代NPUを統合し、NPU性能は55 TOPSとされる。MediaTekは、冷却ファンを使わない静かな設計と、端末内で完結するプライベートなAI処理を主な用途として打ち出す。最初の採用例として、Lenovoの今後のGooglebookが示されている。
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出荷規模がまだ明らかでない段階でも、この製品は戦略的な意味を持つ。MediaTekは従来、モバイル向けやChromebook級のシリコンで知られてきた。CXは、バッテリー駆動時間、熱設計、ローカルAI性能が従来型のCPU性能と並んで重視される、より上位のノートPCへ向けた製品ブランドとなる。
RTX Spark搭載Windows PCとの関係
LenovoとAcerのRTX Spark搭載Windowsシステムは、NVIDIAベースのローカルAI PCに対するOEMの関心を示す。ただし、提供された情報だけでは、これらのシステムがMediaTek製プロセッサーを使うこと、あるいはMediaTekの採用実績であることは確認できない。
したがってRTX Sparkは、MediaTekのPC売上の裏付けではなく、AI PC市場全体の文脈として捉えるのが妥当だ。
台湾の半導体エコシステムを支える構図
MediaTekの成長は、一社のチップ設計会社だけの話ではない。同社の製品は、台湾を中心とする先端ロジックの供給網で製造される。
Counterpoint Researchによれば、TSMCは純粋ファウンドリー市場で2026年第1四半期・第2四半期ともに**73%のシェアを持つ。2026年第2四半期のSamsung Foundryは7%**だった。
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この差は、AI、PC、カスタムシリコンの需要が先端プロセスへ移るなかで、台湾の受託製造基盤が持つ規模を示す。MediaTekの場合、PC向けC10 MaxそのものがTSMCの3nmプロセスで作られるため、台湾のファブレス設計企業によるPC市場参入は、TSMCの先端製造と直接結び付いている。
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また、SamsungのFoundry事業とSystem LSI事業は、2025年後半以降、四半期あたりおよそ1兆〜2兆ウォンの損失を計上しているとの報道もある。
55 ファウンドリーのシェア差と合わせれば、少なくとも当面は、台湾の受託製造・ファブレス設計モデルに追い風があるといえる。
台湾優位は強まるが、勝負が決したわけではない
MediaTekはより高付加価値なコンピューティング市場を狙い、TSMCは純粋ファウンドリーで圧倒的な規模を維持している。NVIDIAとの連携、AI PC向け新製品、TSMCの製造能力は、AIコンピューティングでの台湾の勢いを補強する材料だ。
ただし、これを韓国に対する恒久的・全面的な半導体上の勝利とみなすのは行き過ぎである。ファウンドリーのシェアは、半導体産業のすべてではなく、あくまで純粋ファウンドリー市場を測る指標だ。Samsungは依然として大手半導体企業であり、MediaTekの2027年のデータセンター事業も、まだ実現済み売上ではない。
より正確な結論は、台湾が先端ロジックの設計と受託製造で現在の優位を強めている、ということだ。最終的な競争の行方は、顧客獲得、先端プロセスの供給、製品実行、そしてAIインフラの投資サイクルによって決まる。