しかし現在のイラン政治は、アリー・ハメネイ時代のような強力な個人による統治とはかなり異なる姿を見せていると多くの報道や分析が指摘している。モジタバ・ハメネイが重傷と安全上の理由で公の場から姿を消しているため、国家運営は「象徴的な最高指導者」と「実務を担う安全保障エリート」の組み合わせによって行われているとみられている。
モジタバ・ハメネイは指導者就任後、写真・映像・音声のいずれでも公に確認されていないと報じられている。
情報機関の評価や関係者の証言によると、彼は父親が死亡した攻撃で負傷し、現在も高度に警備された場所で療養を続けているとされる。
報道では、以下のような負傷が伝えられている。
・顔や唇の火傷
・脚の重傷(複数回の手術を受けたとの報道)
・発話が困難な可能性
一部報道では将来的に義足が必要になる可能性も指摘されているが、これらの詳細のすべてが独立して確認されたわけではない。
さらに、外国情報機関に所在を特定されることを恐れ、高官の訪問や電子通信が厳しく制限されているとも報じられている。
このため政治アナリストの間では、現在の体制を**「見えない指導者(invisible leadership)」**と呼ぶこともある。
モジタバ・ハメネイの指示は、電子通信ではなく手書きのメッセージで伝達されていると報じられている。
複数の報道によれば、その仕組みは非常にアナログだ。
・メッセージは手書きで作成
・封筒に入れて封印
・信頼できる使者が車やオートバイで運搬
・複数の仲介者を経て政府や軍の指導者に届く
返信も同じルートで戻されるという。
この方法は、電話・暗号メッセージ・電子信号を追跡できる高度な監視システムによる位置特定を防ぐためと説明されている。
ただし、その代償として意思決定のスピードや直接統治の能力が制限される可能性も指摘されている。
モジタバ・ハメネイが孤立状態にあることから、イランの実質的な政治は少数の軍・政治エリートによる集団指導に近づいているとの分析もある。
多くの報道は、特にイスラム革命防衛隊(IRGC)と結びついた人物が大きな影響力を持っていると指摘する。
頻繁に名前が挙がる人物には次のような人々がいる。
・アフマド・バヒディ — 最高指導者と他の政府高官の間の連絡役とされる人物。
・モハンマド・バゲル・ガリバフ — 政治的メッセージや政権の調整に関与する有力政治家。
・ゴラムホセイン・モフセニ=エジェイ — 司法トップで体制内部の重要人物。
このような人物たちはしばしば、政権を実務面で動かす**「兄弟団(band of brothers)」のような安全保障エリート集団**として描写されている。
多くの専門家は、モジタバ・ハメネイの権力は父アリー・ハメネイほど強固ではないとみている。
主な理由として挙げられるのは次の点だ。
・宗教的権威や聖職者ネットワークが父ほど強くない
・政治経験が比較的短い
・負傷と安全対策による物理的な孤立
・手書き通信などによる間接的な意思伝達
アリー・ハメネイは30年以上にわたり軍・宗教機関・政治勢力のバランスを調整する役割を担っていたが、そのような統合的権威をモジタバがまだ確立していないと分析されている。
それでも米国の情報機関の一部評価では、モジタバ・ハメネイは戦争戦略や外交交渉の方向性に依然として重要な役割を果たしているとされる。
ただし同時に、現在のイラン政権は以前よりも分散化し、革命防衛隊や治安エリートの影響が強まっているとの見方も示されている。
指導者交代から数か月が経過した現在でも、モジタバ・ハメネイが実際にどこまで政策を直接コントロールしているのかは明確ではない。
現時点での報道を総合すると、イランの統治構造は次のようなハイブリッド型と考えられている。
・モジタバ・ハメネイが形式上の最高権威
・革命防衛隊に近い少数のエリート集団が実務を主導
・両者の間の通信は極めて秘密性の高い手書きメッセージに依存
この体制が一時的な非常措置なのか、それともイラン政治の新しい常態になるのかは、依然として大きな不確実性に包まれている。