従来のCRM(顧客関係管理)では、顧客データの管理に加え、企業・担当者の調査、見込み客開拓、アウトバウンド営業、カスタマーサクセス、レベニューオペレーション向けのツールを別々に組み合わせるケースが多い。ヘルシンキ拠点のZeroは、こうした分断を前提にしない。共通の顧客コンテキストを基盤にAIエージェントを動かし、営業活動の多くを一つのGTM(go-to-market:市場開拓・販売活動)システムで担わせる構想だ。同社は2026年9月15日、Primary Venture Partners主導で1030万ドルのシードラウンドを実施したと発表した。
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「CRMにAIを足す」のではなく、ツール群を置き換える
Zeroは自社製品を、従来型CRMの追加機能ではなく、AIベースのGTMオペレーティングシステムと位置付ける。目標はCRM本体だけでなく、その周辺にある営業、見込み客開拓、カスタマーサクセス用ツール群を代替することだ。
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同社が想定するAIエージェントの役割は、顧客ライフサイクル全体に及ぶ。
- 見込み客開拓:見込み客やターゲット企業のリストを作成する
- アウトバウンド営業:外向きの営業アプローチを支援する
- 営業事務:顧客レコードを更新し、次のフォローアップを準備する
- 契約後の顧客管理:更新まで顧客の状態をモニタリングする
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焦点は、機能数だけではない。Zeroは、見込み客開拓、商談、契約後の活動を、同じ顧客レコードを共有するエージェントで扱う設計を掲げる。CRMと複数の専門ツールの間で情報を移し替えるのではなく、共通の文脈で業務を回すという考え方だ。これが、単機能の営業支援ツールではなく、SalesforceやHubSpotを中心に構成されてきた広範なソフトウェア群に挑むとする根拠になっている。
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Smartlyでの経験は、何を意味するのか
Zeroを創業したのはTuomo RiekkiとSanttu Koivumäki。RiekkiはSmartlyの共同創業者で、Koivumäkiは同社で5市場にまたがるGTMを率いた。両者は、SmartlyをARR(年間経常収益)1億ドル規模に成長させる一翼を担ったという。
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もちろん、この経歴だけで既存CRM大手に勝てることが保証されるわけではない。ただし、販売組織向けソフトウェアを構築・販売する際の運用上の複雑さを経験していることは、Zeroが解消しようとする問題を理解するうえで重要な背景といえる。
1030万ドルのシードラウンド、参加者は
今回の1030万ドルのシードラウンドは、ニューヨーク拠点のPrimary Venture Partnersが主導した。Inception Fund、Defiant、Greensに加え、Lovable、Supercell、Langdock、Silo AI、Depictに関わる創業者らが参加。個人投資家としてFabian Hedin、Ilkka Paananen、Peter Sarlinの名前も挙がっている。
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これに先立ち、Zeroはプレシードを主導した20VC、PostHog共同創業者のJames Hawkins、Spotify、Wolt、Shopify、Dropbox、Meta、OpenAIの経営幹部が支援するオペレーター系ファンドからも出資を受けていた。
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Zeroは今回の調達について、フィンランドのテクノロジー企業によるシードラウンドとして最大級の一つだとしている。
13 実務面では、米国のベンチャーキャピタルと、欧州のソフトウェア・AI企業を手掛けてきた創業者やオペレーターの双方を支援者に迎えた点が重要だ。国際市場でカテゴリーそのものを取りにいく初期企業にとって、資金以外の支援も得やすくなる可能性がある。
成功の条件は「自動化」以上に信頼を得られるか
Zeroの課題は、営業業務にAI自動化を加えることにとどまらない。CRMスタック全体を本当に置き換えるには、企業が顧客情報と日々の商業プロセスを一カ所に集約してもよいと判断できるだけの信頼性が必要になる。
実現には、少なくとも次の条件がそろう必要がある。
- 正確な顧客コンテキスト:見込み客の選定、フォローアップ、顧客状態の把握に役立てるには、顧客レコードとシグナルが信頼でき、適時に更新されなければならない。
- つながったワークフロー:見込み客開拓、営業、カスタマーサクセスが同じ文脈で動く必要がある。新たな分断ツール群を作るだけでは、統合する意味が薄れる。
- 運用上の信頼:顧客対応や売上に直結する仕事で、営業チームがエージェント支援のプロセスを使えると判断することが不可欠だ。
- 現実的な移行手段:Zeroは、14日間の無料トライアルと既存ツールからのAI支援移行を提供するとしている。CRM市場では、乗り換えコストが大きな障壁であることを示す取り組みだ。
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資金調達の規模と創業チームの実績は、この市場機会に対する初期の評価ではある。しかし、既存のCRMプラットフォームを置き換えられることの証明ではない。最初の接点から契約更新までを一貫して任せられるシステムとして、AIエージェント中心の業務フローを定着させられるかどうかが、Zeroにとっての本当の試金石になる。