Stand With Cryptoは、暗号資産政策を選挙の争点として定着させようとしている。Coinbaseが支援するこの政策団体は、2026年11月の米中間選挙に向け、現職の下院議員32人を推薦した。共和党のトム・エマー、ビル・フイゼンガ、民主党のリッチー・トーレス、ジョシュ・ゴットハイマーら、暗号資産業界に友好的な議員が含まれる。 419
今回の推薦は、単なる政治的な応援ではない。上院で先行きが不透明になっている暗号資産の市場構造法案「CLARITY Act」を、下院で再び支えられる議員を確保する狙いがある。
CLARITY Actをめぐる下院の連携を守る
推薦対象を選ぶ際の重要な基準になったのは、候補者が過去にCLARITY Actを支持したかどうかだ。同法案は、デジタル資産市場における規制当局の役割や市場ルールを明確化することを目指す、超党派の法案である。 519
推薦された議員には、主要な業界支持者だけでなく、アリゾナ州の共和党議員フアン・シスコマニ、ペンシルベニア州の共和党議員ブライアン・フィッツパトリックも含まれる。両州のように選挙戦が競り合う地域では、特定の政策を軸に組織化された有権者の存在が、より大きな意味を持つ可能性がある。 4519
CLARITY Actは下院を通過した後、上院で審議が進められている。議会記録によると、同法案に進むための手続きに関するクロージャー動議は、2026年8月8日に上院で提示された。 2
上院が法案を修正したり、審議を遅らせたり、下院に差し戻したりすれば、下院での再審議が必要になる。その場合、すでに法案を支持した現職議員を選挙後も議会に残しておくことが、Stand With Cryptoにとって重要になる。
この取り組みは党派をまたいでいる。エマー議員とトーレス議員は、議会のCrypto Caucus(暗号資産議連)の共同リーダーを務め、消費者資金を預からないデジタル資産の開発者やサービス提供者を、送金業者として扱わないことを目指す別の超党派法案も共同提出している。 114
狙いは献金だけでなく「投票する支持者」
Stand With Cryptoの2026年キャンペーンは、同団体が2024年に登録したとする米国の支持者300万人超を基盤にしている。目指しているのは、暗号資産を支持する候補者を見つけ、議員の実績を支持者に伝え、暗号資産政策を投票行動につながる争点として扱うことだ。 78
同団体は、政治家の暗号資産政策に関する立場を評価・公開するほか、支持者が上院議員に電話やメールで意見を伝えられる仕組みも提供している。こうした活動によって、法案への働きかけを継続的な有権者組織化へとつなげようとしている。 569
これは、候補者への直接的な選挙支出とは役割が異なる。広告や独立支出は選挙戦で候補者を支援する手段だが、組織化された支持者層は、議員に対して「暗号資産政策が自分の選挙区で票に影響する」と意識させる材料になる。
上院向け推薦の時期は未定
CLARITY Actは、暗号資産業界にとって最重要の市場構造法案と位置づけられている一方、上院では一部議員の反対を受けて停滞している。Stand With Cryptoは、法案を進めた下院の議員を守りながら、上院議員にも直接圧力をかける構えだ。 41921
ただし、上院議員への推薦をいつ発表するかについて、提供された報道資料には確定した日付がない。現時点で確認できるのは、同団体が後日発表する計画を示していることまでである。具体的な発表日を断定する根拠はない。 69
170億ドル規模から見る業界の政治力
暗号資産業界の政治活動は、個別の推薦にとどまらない。提供された報道では、業界は2024年の選挙で約1億7,000万ドルを支出し、2026年の中間選挙に向けては約2億ドルを拠出することを約束している。その多くは、FairshakeスーパーPACに関連する活動だとされる。 34
また、業界はステーブルコイン規制の進展を成果として挙げている。議会記録によると、ドルなどの法定通貨に連動するステーブルコインを対象とするGENIUS Actは、2025年7月18日に「Public Law 119-27」として成立した。 1718
これらの動きから見えるのは、暗号資産業界がワシントンで複数の手段を組み合わせる政治組織へと変化していることだ。そこには、超党派の議員との関係づくり、草の根型の政策運動、有権者動員、スーパーPACを通じた大規模な独立支出が含まれる。 3478
もっとも、選挙支出だけがGENIUS Act成立の原因だったと証明する資料はない。確認できるのは、暗号資産業界が大規模な政治投資を行った時期に、連邦レベルで初めて大きなステーブルコイン法が成立し、その勢いを2026年選挙に持ち込もうとしているという点だ。 3417
戦略の核心
Stand With Cryptoが目指しているのは、暗号資産を支持する議員の立法実績を、選挙で評価される実績に変えることだ。CLARITY Actに賛成した現職下院議員を推薦し、300万人超とする支持者ネットワークを動員し、Fairshakeなどの政治資金ネットワークと組み合わせる。
そのメッセージは明確だ。暗号資産政策を支持すれば組織化された有権者の支援を得られる一方、反対すれば大規模な政治資金や選挙運動に直面する可能性がある。今回の32人の推薦は、暗号資産業界が政策課題を投票行動と結びつけ、米議会での影響力を長期化させようとする取り組みの一環といえる。