CATL(寧徳時代)は、バッテリーの競争力を測る物差しに「ライフサイクル全体での炭素排出量」を加えようとしています。コスト、安全性、エネルギー密度、供給能力が依然として重要であることに変わりはありません。しかし同社の最新の気候ロードマップは、サプライヤーが検証可能な炭素データを示せるかどうかも、今後の取引を左右し得ることを示しています。
この方針が注目されるのは、CATLが自社の製造拠点だけでなく、電池の原料から完成品までを含む「バリューチェーン」全体を対象にしているためです。CATLは、2025年末までに中核事業でカーボンニュートラルを達成し、20カ所すべてのバッテリー工場がカーボンニュートラルの認証を取得したと発表しました。次の目標は、2035年までにバッテリーのバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することです。
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排出量の中心は自社工場の外にある
バッテリーの気候負荷は、セルを組み立てる工場だけで決まるわけではありません。CATLによると、同社製品のライフサイクル排出量の80%超はサプライチェーンに由来します。焦点となるのは、工場の電力だけでなく、鉱物の処理・精製や、正極・負極などの電池材料を生産する上流工程です。
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これは調達にとって重要な違いです。電池メーカーが自社工場の排出量を削減しても、材料の生産段階で大きな炭素排出が発生していれば、完成したセルのカーボンフットプリントは下がりません。CATLにとって、最大の削減余地と残されたリスクは、材料を生産・加工するサプライヤー側にあります。
炭素データがサプライヤー選定に入る
CATLのロードマップは、排出量の測定を購買判断と結び付けています。同社は、2027年から新規サプライヤーに製品カーボンフットプリントのデータ提出を求める新たな調達ガイドラインを設ける計画です。再生可能電力の利用状況やエネルギー効率もサプライヤー評価の対象とし、同程度の商業条件であれば、低炭素性能に優れた企業を優先する方針が示されています。
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これにより、炭素開示の意味は変わります。データはサステナビリティ報告書に載せるだけの情報ではなく、サプライヤー資格の審査、年次評価、発注配分に影響する可能性があります。従来の技術要件や価格条件を満たしていても、信頼性があり監査可能な排出量データを提出できない企業は不利になり得ます。
ただし、現時点で確認できるのは計画中のガイドラインと、低炭素性能の高いサプライヤーを優先する方針です。排出量の多いサプライヤーが、直ちにCATLとのすべての取引を失うとまでは、公開情報からは断定できません。
まず測定の仕組みを整備
調達ルールは、比較可能なデータがなければ運用できません。CATLは2022年、製造拠点や生産ライン、主要な上流サプライヤーの排出量を監視・算定するため、「CATL Carbon Chain Management System(CCMS)」を独自開発したと説明しています。同システムは現在、製品と原材料を合わせて1,000を超えるモデルの炭素データをカバーしていると報じられています。
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また、CATLは100社を超える主要なティア1サプライヤーについて、炭素排出量の基準データを整備しており、今後は重要な上流工程へ対象範囲を広げる計画です。
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この基盤によって、CATLはサプライヤーを価格や技術性能だけで比較するのではなく、製品単位の排出量や削減実績でも評価できるようになります。サプライヤーが申告した削減効果が、実際の製品カーボンフットプリントに反映されているかを確認する手段にもなります。
2035年の目標は工場の外まで及ぶ
CATLが達成したとする2025年の節目は、中核事業のカーボンニュートラルです。これは、バッテリーのバリューチェーン全体を対象にした2035年目標よりも狭い範囲を指します。CATLによると、2025年には中核事業で消費する電力の100%をゼロカーボン電力で賄いました。
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一方、2035年の目標には、CATL製バッテリーに投入される材料を供給する企業も含まれます。達成には、CATLが所有する工場の電力を切り替えるだけでは足りません。サプライヤー側でも、低炭素電力の調達、エネルギー効率の改善、顧客や第三者の精査に耐えられる測定体制が必要になります。
CATLは、サプライヤーへの要求と脱炭素化の支援を組み合わせる方針を示しています。単純に基準未達の企業を排除するよりも実行可能性を高める可能性がありますが、各サプライヤーにどの程度の支援を提供するのか、性能基準をどう適用するのかは、公開情報だけでは明らかになっていません。
電池業界の参入障壁を押し上げる可能性
CATLのアプローチが大手バッテリー購入者の間で一般化すれば、大口契約を獲得するために必要なのは製造能力だけではなくなります。サプライヤーには、次のような能力も求められる可能性があります。
- 信頼できる製品カーボンフットプリント
- 上流原料まで追跡できる排出量データ
- 再生可能電力またはゼロカーボン電力の調達
- 改善を続けるエネルギー効率
- 材料と完成したバッテリー製品を結び付けるトレーサビリティー
これは、クリーン電力、データシステム、製造工程の改善に投資できるサプライヤーに有利に働きます。また、購買力を持つ大手電池メーカーが、サプライチェーン全体に共通の報告要件を導入することも容易になります。
CATLの曾毓群董事長は、低炭素またはゼロカーボンでないバッテリーは時代に取り残されるリスクがあるとの見方を示しています。
14 調達ロードマップは、この警告をサプライヤー評価や発注の優先順位と結び付け、具体的なビジネス上の仕組みに変えようとするものです。
まだ証明されていないこと
公開情報が裏付けているのは、CATLが発表した2025年の中核事業における節目、2035年のバリューチェーン目標、製品ライフサイクル排出量の80%超をサプライチェーンが占めるという説明、炭素管理システム、そして2027年から予定される新規サプライヤーへのデータ提出要件です。
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一方で、CATLがすでに高炭素のサプライヤーを排除したこと、顧客向けのすべてのカーボントレーサビリティー施策が実運用されていること、競合する電池メーカーが同等のルールを導入したことまでは、これらの情報だけでは証明できません。
最終的な競争への影響を決めるのは、実装の成否です。CATLの炭素データが独立した検証に耐え、調達ルールが一貫して適用され、自動車メーカーが検証済みの低炭素バッテリーに商業的価値を認めるなら、炭素性能はコスト、安全性、エネルギー密度と並ぶ資格要件になり得ます。低炭素であることは、単なる自主的なESG上の加点要素ではなく、取引を獲得するための前提条件へと変わる可能性があります。