クック氏の後任としてCEOに就任するジョン・ターナス氏も、iPhoneのメモリ部品コストが4倍になっていることに言及し、問題の深刻さを強調。退任するCEOと後継者によるこの統一的メッセージは、Appleの価格戦略が新たな章に入ったことを示している 。
クック氏は具体的なデバイス名を挙げていないが、アナリストとサプライチェーン関係者の間では、以下のようなタイムラインが有力視されている。
根本的な原因は、世界のメモリチップの配分方法が構造的に変化したことにある。人工知能(AI)の爆発的な成長が、大規模なAIモデルの学習と実行に使われるサーバー向けの特殊なDRAMである**HBM(高帯域幅メモリ)**への底知れぬ需要を生み出した。サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンといったメーカーは、利益率がはるかに高いHBMの生産を優先し、従来型のDRAMから生産能力の多くを振り向けることで対応している 。
この「HBMへの生産吸い上げ効果」により、スマートフォンやノートPC、タブレットに使われる標準的なメモリチップの生産ラインが不足している。マイクロンのビジネス責任者であるスミット・サダナ氏はCNBCのインタビューで、この不均衡の規模を雄弁に語り、需要は「我々の供給能力、そして我々の見解では、メモリ業界全体の供給能力を超えた」と述べている 。
この危機はAppleにとどまらず、テクノロジー業界全体の経済構造を塗り替えつつある。業界全体から見える主要な指標は、厳しい現実を描き出している。
かつてメモリの大口購入者だったコンシューマー・エレクトロニクスメーカーは、プレミアム価格での支払いと長期契約を厭わないハイパースケールなクラウドプロバイダーやAIインフラ構築企業に押しのけられている形だ。Appleはその巨大な購買力により、多くの企業よりは有利な立場にあるが、マクロ経済の逆風に対して無傷ではいられない 。
消費者にとっての結論は明らかだ。このメモリ不足は一過性のものではなく、半導体市場の構造的再編であり、価格の沈静化は早くとも2027年までは期待できない。9月に予想される次期iPhoneの発表は、Appleがコスト増の何割を消費者に転嫁する意思があるのかを占う、最初の重要な試金石となる——初期の推計では、その額はかなりのものになりそうだ。
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