この状況は、交渉が進むほど戦闘が弱まるという単純な構図ではないことを示している。むしろ双方が軍事的圧力を維持しながら、交渉で有利な立場を確保しようとしているとの見方が強い。
最近のエスカレーションの象徴的な出来事が、ロシアによるウクライナ首都キエフへの攻撃だ。
ロシア軍の攻撃により都市の建物やエネルギー施設が被害を受け、少なくとも7人が死亡したと報告された。
この攻撃は、米国が提示した和平案をめぐる議論が進む最中に発生した。戦争ではこれまでにも、大規模攻撃が外交交渉のタイミングと重なるケースが繰り返されている。
一方でウクライナも攻撃を強めている。
同じ時期、ウクライナによるロシア南部への攻撃で3人が死亡し住宅が損壊したと現地当局が発表した。
ウクライナは近年、長距離ドローンを使った越境攻撃を増やしており、軍事施設やインフラなどを標的としている。こうした攻撃は、戦争のコストをロシア国内にも広げることでモスクワ側に圧力をかける狙いがあるとみられている。
外交の場では、双方が相手こそ和平を妨害していると主張している。
ロシア政府は、ウクライナが欧州諸国の支援を受けてロシア領へのドローンやミサイル攻撃を増やし、和平交渉を妨害していると非難している。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアが停戦案を拒否しながら戦場での攻撃や空爆、ドローン攻撃を続けていると批判している。
こうした相互不信は、交渉を進めるうえで大きな障害となっている。
交渉が再開しても、根本的な争点は依然として解決していない。
ウクライナは、将来の侵攻を防ぐため西側諸国から強力な安全保障を求めている。議論されている案には、NATOの集団防衛条項に近い保証や国際的な安全保障枠組みなどが含まれる。
ロシアとウクライナは、占領地域をめぐる立場が大きく対立している。ウクライナや欧州の多くの政府は、ロシアの領土獲得を既成事実として認める合意には強く反対している。
欧州の政府関係者の間では、ロシアに有利な形での合意が成立すれば、ウクライナの安全が長期的に弱まり将来の侵攻を招く可能性があるとの懸念も根強い。
現在の状況は、外交と軍事が同時に進むという矛盾した構図を示している。
ドローン攻撃、ミサイル攻撃、越境攻撃が続く中で交渉は再開されているが、現時点での協議は即時停戦よりも、将来の合意条件をめぐる駆け引きの側面が強い。
そのため、和平への道筋はまだ見えておらず、戦場の動きが外交の行方を左右する状況が続いている。