イランは外交的な非難にとどまらず、具体的な軍事行動も報告している。イスラム革命防衛隊(IRGC)は、今回の交戦においてイラン領空に侵入したとされる米国の無人偵察機「MQ-9 リーパー」を撃墜し、さらにF-35戦闘機に対しても射撃を行ったと主張した。
これらの主張を独自に検証することは困難だが、イランの情報発信には明確な意図が込められている。それは、イランが攻撃をただ座視するだけの存在ではないことを示すことだ。さらにIRGCは声明で、「将来のいかなる停戦違反に対しても、相互的な応答を行う権利は正当かつ確実なものと見なす」と警告している。これは、エスカレーションの可能性を極めて強い口調で示唆するものだ。
5月の攻撃に先立つ4月30日と5月1日、IRGCの高官を含むイラン政府要人は、たとえ限定的なものであれ、米国が新たな攻撃を行った場合、中東全域の米軍拠点に対して「長く苦痛を伴う攻撃(long and painful strikes)」で報復すると公然と警告していた。
この警告は、世界の石油の約2割が通過していたホルムズ海峡の管理権はイランにあるという主張とセットで語られた。イランは、米国による自国石油輸出への海上封鎖に対抗する形でホルムズ海峡の通航を事実上封鎖しており、和平交渉においても「いかなる合意においても、ホルムズ海峡の管理は引き続きイランが担う」と主張している
。
これらの脅しは決して空威張りではない。2026年2月28日の開戦以来、イランはミサイルと無人機を用いて、米国大使館、軍事施設、石油インフラ、そしてホルムズ海峡を航行する船舶に至るまで、幅広い攻撃能力を実証してきた。
4月上旬にパキスタンの仲介で成立した停戦合意は、今や有名無実化している。米国とイランの双方が攻撃行動を継続しており、いずれも自らの行為を「自衛」または「防衛的」なものと正当化している。この停戦は、外部の専門家から「脆弱」または「かろうじて維持されている」と繰り返し評されてきた
。
パキスタンが仲介する和平協議も根本的な膠着状態を打開できていない。イランは5月10日、米国の停戦提案への返答として、交渉はレバノンを含む「全ての戦線」での戦争終結と船舶の航行の安全確保に焦点を当てるべきだと主張した。一方ワシントンは、ホルムズ海峡の完全再開とイランの核開発計画の放棄を要求し続けており、トランプ大統領は合意に至らなければ全面的な爆撃を再開すると脅している
。
今回の5月25~26日の攻撃は、和平に向けた外交的な雰囲気をさらに悪化させた。停戦が繰り返し破られる中、イランからの報復の脅しはより具体的になり、特にホルムズ海峡の支配権をめぐる双方の立場は硬化している。和平への外交的枠組みは極度の重圧にさらされており、両国が軍事対応の準備を進めるにつれ、交渉による解決への道は急速に狭まっている。
Comments
0 comments