陪審員の選定は4月下旬に開始。約3週間にわたる証言と弁論の後、双方の弁護士が最終弁論を行い、現在は陪審が評議している段階となっている。
ここで下される判断は、OpenAIが組織構造を変え、大規模な商業パートナーシップを進めたことが法的に問題だったのかを決定づける。
マスクは2015年、サム・アルトマンやグレッグ・ブロックマンらとともにOpenAIの設立に関わり、約3800万ドルを提供した主要な初期支援者の一人だった。
彼の主張はシンプルだ。
マスク側の弁護士は法廷で、この変化を「慈善団体を乗っ取ったようなものだ」とまで表現し、非営利組織の資産や使命が商業ビジネスに転用されたと主張している。
一方、OpenAIはこの主張を否定。高度AIの開発には膨大な計算資源と資金が必要であり、現在のハイブリッド構造は研究を続けるために不可欠だったと説明している。
陪審が最初に決めるのは、いわゆる「責任(liability)」の有無だ。つまり次のような点が焦点となる。
もし陪審が不正行為を認めれば、裁判は次の段階に進み、どのような是正措置を取るべきかが検討される。
議論されている可能な措置には次のようなものがある。
なおマスクは、仮に賠償が認められた場合でも自分が受け取るのではなく、OpenAIの非営利財団へ渡すべきだと主張している。
現在のOpenAIは、もはや小さな研究所ではない。数十億ドル規模の投資とパートナーシップを背景に、世界のAI競争の中心企業の一つとなっている。
特に注目されているのは、同社の将来の資金調達やIPO(株式公開)計画への影響だ。
法務や投資の専門家によれば、もしマスクが勝訴した場合、
といった大きな変更が命じられる可能性がある。
それは投資家にとって重大な不確実性となり、IPOのスケジュールや企業価値の評価にも影響する可能性がある。
この裁判は、表面的にはマスクとOpenAI経営陣の対立だ。しかし、その背景にはより大きなテーマがある。
それは、最先端AIは公共の利益のために開発されるべきなのか、それとも巨大な民間投資による商業産業として発展するべきなのかという問題だ。
今回の陪審の判断は、将来ほかのテック企業が
と変化する際の法的な前例になる可能性もある。
最終的な問いはシンプルだ。
OpenAIは創設時の約束を守りながら進化したのか。
それとも、莫大な商業価値が見えた瞬間に方向を変えたのか。
その答えは、いま陪審の評議室の中にある。