その後、地域情勢の不透明さを理由に運休は段階的に延長された。
航空会社は「中東の情勢が非常に流動的」であることを理由に、旅客や貨物顧客が計画を立てやすくするための措置だと説明している。
運休した機材を遊ばせるのではなく、キャセイパシフィックは需要の強い市場へ再投入している。
特に欧州方面では、ロンドンやチューリッヒなどの路線で需要が伸びており、追加便や供給拡大が行われた。
中東の空域制限や地政学的リスクにより、旅行者が別のハブ経由を選ぶ動きが強まっているためだ。航空会社にとっては、機材を需要の強い市場へ素早く移すことで収益を守ることができる。
もう一つの大きな課題が燃料コストだ。
国際航空運送協会(IATA)のデータによると、世界平均のジェット燃料価格は2026年4月初旬に1バレル約197.83ドルに上昇。これは2月下旬の約99.40ドルからほぼ倍増した水準だ。
キャセイの経営陣は、この燃料高騰が航空業界全体に「非常に大きなコスト圧力」を与えていると説明している。
燃料費は航空会社の最大コストの一つであり、急激な上昇は運航計画や路線戦略に直接影響する。
こうした環境にもかかわらず、キャセイパシフィックの需要は堅調だ。
2026年4月の実績は次の通り。
さらに2026年1〜4月累計でも旅客数は前年同期を大きく上回り、国際旅行の回復が続いていることを示している。
同社によると、休暇シーズンや季節需要が高い搭乗率を支えており、貨物需要も比較的安定している。
キャセイパシフィックは、パンデミック後のネットワーク回復の一環として約10%の供給能力拡大を目標にしてきた。
しかし湾岸路線の停止や燃料価格の高騰は、その計画にとって明らかな逆風となる。
それでも同社は大規模な路線削減には踏み切らず、機材の再配置やスケジュール調整によって成長を維持する方針を取っている。
今後の夏季ピークに向けて、キャセイは多くの路線で強い需要が続くと見ている。
ただし航空業界の見通しは依然として外部要因に左右されやすい。中東情勢が長期化したり燃料価格が高止まりすれば、各社が運航計画を再び調整する可能性もある。
今回のキャセイの対応は、現在の航空業界の典型的な戦略を示している。
地政学的リスクが高い路線は一時停止し、需要の強い市場へ機材を振り向けながら、状況に応じて柔軟にネットワークを調整する。