この構造により、役割は次のように分かれます。
つまり、ユーザー体験はCopilot、実際の業務ロジックとデータ管理はWorkdayという形で役割分担がされています。
従業員にとっては、Sanaエージェントは日常ツールの中にいるAI型のHRアシスタントのような存在になります。
Copilotのチャットから次のようなことが可能です。
これらはMicrosoft 365から離れずに実行でき、業務の流れを止める必要がありません。
管理職向けの業務もCopilotから実行できます。代表例がタイムシート(勤怠)の確認と承認です。
ただし承認処理そのものはWorkdayのワークフローとして実行されるため、既存の承認ルートや履歴、監査ログは変わりません。
SanaエージェントはHRだけでなく、従業員向けの財務業務にも対応します。
例えば次のような操作です。
これらもWorkdayの財務ワークフローに接続されているため、既存の業務ルールに従って処理されます。
今回の統合の重要な設計思想は、企業の統制を回避しないことです。
Copilotが直接データを操作するのではなく、Workdayが引き続き実行環境として機能します。結果として次の仕組みが維持されます。
さらにMicrosoftの導入ガイドでは、Workday側で以下のような設定が必要とされています。
これによりアクセス範囲を厳密に制御できます。
AIエージェント統合と聞くと大規模開発を想像しがちですが、このケースでは既成のエージェントフレームワークが提供されています。
MicrosoftはCopilot Studioで利用できる
Employee Self‑Service(ESS)エージェント
を提供しており、そこにWorkday拡張パックを追加することで接続できます。
一般的な導入手順は次の通りです。
完全にノー設定ではありませんが、ゼロから統合を作る必要はありません。
このリリースは単なる機能追加ではなく、WorkdayとMicrosoftの長期的なAI戦略の一環です。
両社は2025年から、企業向けに相互運用可能なAIエージェントのエコシステムを構築する取り組みを進めています。
その中核となるのがWorkdayの
Agent System of Record(ASOR)
という概念です。
このモデルでは次の役割分担が想定されています。
SanaエージェントのCopilot統合は、その構想が実際の製品として形になった最初の例のひとつと言えます。
今回の統合は、企業ソフトウェアの設計思想の変化も象徴しています。
これまで従業員はHRシステム、財務システム、コラボレーションツールなど複数のアプリを行き来していました。しかしAIエージェントが登場したことで、会話型インターフェースが共通の操作レイヤーになりつつあります。
Microsoft 365のような生産性ツールが「入口」となり、Workdayのようなシステムが裏側で業務を実行する。Sana Self‑Service Agentは、その新しい企業AIモデルを示す具体例と言えるでしょう。