サプライチェーン金融では、企業が商品やサービスを提供してから実際に代金を受け取るまでに数週間から数か月かかることが珍しくありません。請求書や売掛債権を担保に資金調達する場合も、銀行審査や書類処理、国際送金などの手続きが複雑になりがちです。
PharosとKUNは、こうした信用資産をデジタル化し、ブロックチェーン上で取引・決済できる資産として扱うことで流動性を高めることを目指しています。これにより、企業はより迅速に資金を回収したり、金融機関が資金供給を行いやすくなる可能性があります。
中心となるのは、サプライチェーン信用資産のトークン化です。具体的には、貿易請求書や売掛債権をブロックチェーン上のデジタル資産として表現します。
これにより、従来は静的な書類だった債権を、標準化されたデジタル資産として扱えるようになり、金融機関や流動性提供者が資金供給を行いやすくなる可能性があります。
もう一つの柱が、ブロックチェーン上で直接決済を完了させる仕組みです。デジタル資産を使ったネイティブ決済により、国際送金で一般的な多段階の仲介プロセスを減らし、決済の摩擦を下げることを狙っています。
両社はさらに、トークン化資産と連動する企業向け仮想カードなどの決済ツールも検討しています。これにより、企業はトークン化された金融資産に基づく流動性を実際の支払いに活用できる可能性があります。
重要な要素として、KUNが運営するライセンス取得済みの国際決済ネットワークがあります。これにより、オンチェーンの資産や取引を既存の金融システムや実際の決済ネットワークと接続し、規制に対応した形で運用することを目指しています。
これらを組み合わせることで、サプライチェーン信用の発行・資金調達・決済までを一体化したオンチェーン金融スタックを構築する構想です。
今回の提携は、Pharosが掲げる**「RealFi(リアルワールド金融)」**戦略の一部でもあります。これは、従来の暗号資産中心のDeFiではなく、実世界の金融資産や決済をブロックチェーンに取り込むことを目的としたアプローチです。
KUNは、PharosのエコシステムプログラムであるRealFi Allianceの第3期戦略パートナーにも参加しました。このアライアンスには、資産発行者、金融インフラ企業、開発者などが集まり、実際の経済活動をオンチェーンに移行させることを狙っています。
Pharosはインフラ構築のための資金調達も進めています。2026年4月には4,400万ドルのシリーズA資金調達を発表し、これまでの調達総額は約5,200万ドルとなりました。
この資金は、トークン化されたリアルワールド資産(RWA)や機関投資家向け決済のためのオンチェーン基盤の開発を加速させる目的で使われるとされています。
もし構想どおりに機能すれば、PharosとKUNの取り組みは、長年の課題とされてきた国際貿易金融の非効率に対する一つの解決策になる可能性があります。
請求書や売掛債権といった従来の金融書類をトークン化し、規制対応の決済ネットワークと接続することで、これらの資産はプログラム可能で流動性のあるデジタル金融資産へと変わるかもしれません。
もっとも、この仕組みが広く普及するかどうかは、銀行や規制当局、そして実際の貿易企業による採用に大きく左右されます。ただし今回の提携は、ブロックチェーン業界が純粋な暗号資産市場から、現実世界の金融インフラへと重心を移しつつある流れを示す事例の一つと言えるでしょう。