ハイライトとなるのは、6月1日に台北ミュージックセンターで行われるフアンの基調講演。ここでは「次世代AIを支えるブレークスルー技術」が紹介される見込みだ。
近年、Computexは単なるPC展示会ではなく、AIインフラ企業にとって重要な発表の場になっている。特にNvidiaにとっては、世界のハードウェアサプライチェーンが集まる場所でもある。
NvidiaのAI戦略を語るうえで、台湾の存在は欠かせない。
同社の最先端チップは世界最大の半導体ファウンドリであるTSMC(台湾積体電路製造)が製造しており、FoxconnやQuantaなどの企業がAIサーバーやデータセンター用システムを構築している。
実際、フアンは台湾の主要テック企業のトップと会合を開き、AIチップの生産拡大について議論してきた経緯がある。
AIインフラ需要の急拡大を受け、TSMCの製造能力も大きく伸びる可能性がある。フアンは以前、Nvidiaの需要だけでも将来的にTSMCのウェハー生産能力を大幅に押し上げる可能性があると述べている。
こうした背景から、Computexの時期に台北でパートナー企業が一堂に会することは、Nvidiaのサプライチェーン調整にとって極めて重要な機会になっている。
今回の訪台で業界の注目が集まっているもう一つの理由が、Nvidiaの次世代AIアーキテクチャ「Vera Rubin」だ。
報道によれば、NvidiaはTSMCの製造ラインの一部を中国向けH200チップからRubin世代のハードウェアへ振り向けているという。
この動きは、Rubinベースのシステムに対する需要が非常に強いとNvidiaが見込んでいる可能性を示している。
Rubinは現在のAIプラットフォームの後継となる設計で、大規模AIモデルの学習や推論処理をさらに高性能にすることが期待されている。パートナー企業を通じた製品投入は2026年後半と見られている。
AIサーバーを構築する企業の多くが台湾企業であることを考えると、Computexは新しいRubin搭載システムを発表する絶好の場でもある。
今回の訪問では、中国市場についての発言も注目を集めた。
フアンは、世界で約2000億ドル規模と見込むCPU市場の中には中国の需要も含まれていると述べ、中国市場が依然として「非常に重要」であると強調している。
ただし、米国政府の輸出規制によりNvidiaの高性能AIチップの販売は大きく制限されている。
その結果、製品ラインの調整や生産配分の変更が必要になっており、Rubin世代への製造シフトもこうした地政学的要因の影響を受けているとみられる。
フアンの早期訪台は、台北がAIハードウェア産業の重要拠点になっている現実を象徴している。
Computexの週には、次のような出来事が同時に起こる。
つまり今回の訪問は、単なる基調講演のためではなく、NvidiaのAIエコシステム全体を動かすための現地拠点として台北が機能していることを示している。
AIインフラの需要が世界的に急拡大する中で、その中心の一つに台湾があることは間違いない。そしてフアンの“早すぎる到着”は、その現実を強く印象づける出来事となった。