これらは BECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage) と呼ばれる技術で生み出されます。バイオマス由来のエネルギー生成時に排出されるCO₂を回収して地下に貯留することで、大気から実質的に炭素を取り除く仕組みです。
BioCircはデンマーク国内の 5つのバイオガス施設 でCO₂を回収する計画です。これらの施設では農業廃棄物などの有機資源からバイオメタンを生産していますが、その過程で発生するCO₂を大気に放出せず回収します。
回収されたCO₂は、契約期間中に段階的にマイクロソフトへ 炭素除去クレジット として供給されます。
回収されたCO₂は、デンマーク沖の貯留プロジェクト 「Greensand Future」 を通じて海底地下に封じ込められます。
大まかな流れは次の通りです。
・回収されたCO₂を液化する
・デンマーク西部の港 エスビャウ(Esbjerg) に輸送し一時保管
・専用船で北海の海上施設へ輸送
・枯渇した油田 Nini West の地下深部へ注入
この油田は海底下の多孔質岩層にCO₂を閉じ込める構造を持ち、上部の不透水層によって長期的な封じ込めが可能とされています。
Greensand Futureは、初期段階で 年間約30万トンを8年間 注入し、合計 約240万トン を永久貯留する計画です。
プロジェクトは INEOS Energy が運営し、Harbour Energy やデンマーク国有企業 Nordsøfonden が参加しています。稼働開始は 2025年末〜2026年頃 が見込まれており、EUで最初期の大規模海底CO₂貯留施設の一つになるとされています。
この契約が注目されたのは、マイクロソフトが 炭素除去クレジットの新規購入を一時停止している と報じられた直後に発表されたためです。
マイクロソフトは、長期的な炭素除去クレジットの 世界最大級の企業購入者 とされ、BECCSやDAC(直接空気回収)など新しい技術市場の需要を牽引してきました。
そのため、同社が新たな長期契約を結んだことは
・炭素除去市場への企業需要が依然として存在する
・大型企業の長期購入契約がプロジェクト資金調達の鍵になる
という点で業界のシグナルと受け止められています。
マイクロソフトは 2030年までにカーボンネガティブ(排出より多くのCO₂を除去) を達成する目標を掲げています。また 2050年までに1975年の創業以来の累積排出をすべて除去する としています。
この戦略は主に3つの柱で構成されています。
・事業とサプライチェーンの排出削減
・カーボンフリー電力の拡大
・炭素除去技術の拡大
BECCSのような 長期的に炭素を封じ込める技術 は、残余排出を相殺する手段として重要視されています。
一方で、AIとクラウド需要の急拡大によりデータセンター建設が増え、マイクロソフトの排出量は 2020年以降増加 しています。特に建設資材やサプライチェーンなどの間接排出が増加の主因とされています。
今回の契約は、マイクロソフトがデンマークで進めるデジタルインフラ拡張とも重なります。
同社は2026年に 「Denmark East」クラウドリージョン を開設し、以下の都市にデータセンター拠点を設置しました。
・Høje Taastrup
・Køge
・Roskilde
これによりデンマーク国内向けAzureクラウドのローカル提供が可能になりました。
さらに同社は デンマーク西部に第2のデータセンター地域 を計画しており、同国で最大級のデジタルインフラ投資の一つになる見込みです。
つまり今回の炭素除去契約は、同社の 地域インフラ拡大による排出影響と、同地域での炭素除去プロジェクト を結びつける形にもなっています。
Microsoft–BioCirc契約は、炭素除去ビジネスが次の段階に進みつつあることを示しています。
・バイオエネルギー施設でCO₂を回収
・輸送インフラで集約
・海底地層に永久貯留
こうした仕組みが拡大すれば、北海は将来的に 欧州全体のCO₂貯留ハブ になる可能性があります。
AIとクラウド需要が急増するなか、大手テック企業にとっては、こうした長期契約がインフラ拡張と気候目標を両立させる重要な手段になりつつあります。