AQAv2(Aligned Quote Asset v2)は、Hyperliquid上で使われるステーブルコインから、プロトコルが経済的価値を得る方法を広げる仕組みです。取引手数料などの既存収益だけでHYPEを買い付けるのではなく、アラインド(連携)されたステーブルコイン残高のコスト控除後の準備金利回りの一部を、HYPE買い戻しを担うAssistance Fundへ振り向けます。
18
20
重要なのは、USDCの元本そのものを買い戻し資金に転用する制度ではないという点です。買い戻しの原資となるのは、USDCの準備資産運用から発生する利回りのうち、所定のコストを差し引いた部分です。
資金の流れ:USDC準備金の利回りからHYPE買い戻しへ
AQAv2では、アラインド・ステーブルコインに「technical deployer」と「treasury deployer」を分けて設定できます。treasury deployerは財務アドレスを指定し、プロトコルが定めるAQAレートの100%をオンチェーンのAQAメカニズムを通じてHyperliquidと共有します。技術側と財務側はおおむね1対9で構成され、実務上は、アラインド残高の**コスト控除後の準備金利回り収益の約90%**がプロトコルへ流れる構造です。
18
23
この収益は取引手数料由来ではなく、Assistance Fundに送られます。同Fundは受け取った資金をHYPEの市場買い付けとバーンに使えると報じられています。
20
つまり、流れは次のように捉えられます。
Hyperliquid上のUSDC残高 → 準備金から生じる利回り → コスト控除 → 約90%をAssistance Fundへ → HYPE買い戻し・バーンの原資
従来のAQAから何が変わったのか
Hyperliquidのドキュメントによると、AQAv2のtreasury deployerはAQA参照レートの全額をプロトコルと共有します。これは既存AQA仕様における収益分配率の2倍と説明されています。
18
AQAv2は、必ずしもHyperliquid専用ではないステーブルコインを想定した設計です。技術運用と財務を切り分け、経済的な収益共有を財務側に担わせます。1対9の配分によって財務側が大部分を占めるため、プロトコルに流れる利回りシェアも大きくなります。
18
23
この枠組みは、26人中19人のバリデーターが賛成し、賛成率69.08%で承認されたと報じられました。
17
利回りの発生と初回の資金移転はいつか
AQAv2の利回り発生は2026年8月26日に始まりました。ただし、その日に資金が直ちに買い戻し基金へ入ったわけではありません。
準備金利回りは30日間ごとに計算され、各計算期間の終了から8日後にAssistance Fundへ自動送金される仕組みです。初回の支払いは2026年10月3日に予定されていました。
18
20
このタイムラグを区別することは重要です。8月26日はあくまで利回りの計上開始日であり、実際の買い戻し原資がFundに到着する日ではありません。
「年1.93億ドル」試算の計算根拠
9月6日の試算では、Arete CapitalのMcKenna氏による以下の前提が使われました。
- AQA v2ウォレットに関連するUSDC:約62.1億ドル
- 指示的なAQA利回り:約3.10%
- 30日SOFR(担保付翌日物調達金利)の参照値:約3.65%
35
62.1億ドルに3.10%を掛けると、約1億9,250万ドルです。丸めると、準備金利回り収益は年換算約1.93億ドルという試算になります。
35
仮にこの収益の約90%がAssistance Fundに入るなら、年額では約1億7,370万ドル、365日で単純に割ると1日あたり約47.6万ドルです。
一部報道には、年換算1.93億ドルと並んで「1日約52.7万ドルの買い戻し圧力」との記述があります。しかし、1.93億ドルの90%を365日で割る単純計算とは一致しません。日次の数字には、別の残高、利回り、期間、年換算方法などの前提が含まれている可能性があります。したがって、これを毎日の確定買い付け額とみなすべきではありません。
35
実際の買い戻し規模を左右する要因
AQAv2による拠出額は固定ではありません。主な変動要因は次の4点です。
- アラインドUSDCの残高:対象構造にあるUSDCが増えれば利回りの計算基盤は大きくなり、引き出しがあれば小さくなります。
- AQA参照レートと金利環境:3.10%は特定時点の金利環境に基づく指示値であり、固定リターンではありません。
35
- 「コスト控除後」のコスト:プロトコルの取り分はグロス金利ではなく、準備金管理などに関わる該当コストを差し引いた後の利回りを基準とします。
18
- Assistance Fundの執行:Fundへの入金は買い戻し余力を示しますが、実際のHYPE購入額・時期・取得枚数は、市場価格や執行方法で変わります。
先行する試算では、資金がAssistance Fundに届き始めた後、日次のプロトコル収益または買い戻し余力が約**18.06%**増える可能性が示されました。これも確定値ではなく、前提に依存するシナリオです。
42
既存の買い戻し策に加わる新たな収益源
Assistance FundはAQAv2以前からHYPEを市場で購入してきました。導入時期の報道では、同Fundは約11億ドルを使い、約4,507万HYPEを取得していたとされます。
25
したがってAQAv2は、既存の買い戻しメカニズムを置き換えるものではなく、追加するものです。戦略上のポイントは、買い戻しの資金源が取引・手数料収益だけに依存せず、ステーブルコインの準備金経済と金利環境にも広がることにあります。
取引拡大と収益の乖離という背景
AQAv2が注目される背景には、Hyperliquidのデリバティブ取引の拡大があります。関連する報告によれば、中央集権型取引所も含めた世界の無期限先物取引高におけるHyperliquidのシェアは、2026年6月30日時点で約9.4%に達しました。プラットフォーム全体の建玉(オープン・インタレスト)は8月23日に約130億ドルへ達したとされています。
3
一方、取引活動の拡大がプロトコル収益にそのまま比例したわけではありません。ある報道では、2026年第2四半期のグロス・プロトコル収益は約2億200万ドルで、2025年第3四半期のピークから43%低下したとされます。取引高と建玉が記録的水準にあっても、builderが展開する市場の経済条件の変化が、両者の乖離の一因とされました。
8
この文脈でAQAv2には、デリバティブ手数料とは異なる収益ドライバーを加える意義があります。ただし、約1.93億ドルはあくまで年換算の利回り試算であり、約2億200万ドルは単四半期の報告済みプロトコル収益です。いずれも重要な数字ですが、対象期間も定義も同じではないため、単純に足し合わせたり、同一基準で比較したりすることはできません。
8
35
結論
AQAv2は、USDC準備金の利回りの一部を継続的なHYPE買い戻し原資へ変える仕組みです。アラインド・ステーブルコイン残高から生じるコスト控除後の利回りの約90%をHyperliquidへ回し、Assistance Fundを通じてHYPEの買い戻し・バーンを支えます。
18
20
約62.1億ドルのUSDC、3.10%の指示的利回り、年換算約1.93億ドルという数字は、その機会の規模感を測る参考になります。しかし、Hyperliquidによる公式予測ではありません。実際の買い戻し寄与は、USDC残高、金利、コスト、30日単位の支払いサイクル、そしてFundの執行によって変動します。
35