ゴールドマン・サックスが2026年末の金価格目標を1トロイオンス当たり4,900ドルへ下げたことは、強気見通しの撤回というより、短期の金融環境を織り込んだ修正と捉えられる。従来の目標は5,400ドルだったが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが想定より後ずれし、金ETFへの資金流入見通しも弱まったため、500ドル引き下げられた。それでも目標値は、相場の持続的な崩れではなく中期的な上昇余地をなお見込む水準だ。
1
4
「構造的には前向き、戦術的には慎重」
ゴールドマンの見方を端的に言えば、長期の需給には前向きだが、足元の相場には慎重というものだ。従来の5,400ドル予想には、米国の金融緩和が進むとの想定が一部にあった。ところが、2026年の利下げ予想が後退したことで、同行は目標を4,900ドルへ修正した。
4
6
金は利息や配当を生まない資産だ。そのため金利が高い状態が長く続くと予想される局面では、金を保有する機会費用が意識されやすい。ドル高も、ドル建ての金を他通貨の投資家にとって割高にし、価格の重しとなり得る。こうした環境はETFへの資金流入を抑え、中央銀行などの長期買いが続いていても、短期的には金価格を圧迫しうる。
実際、8月28日にゴールドマンが年末4,900ドルの予想を改めて示した時点で、金価格は8月25日に付けた3カ月高値の4,697ドルから5.5%下落し、4,436ドル近辺で推移していた。
1
「4,000ドルが底値」は保証ではない
1トロイオンス4,000ドルが下値として堅いという見方は、あくまで市場参加者の判断であり、価格を保証するものではない。提供された資料だけでは、トニー・キム氏とされる「4,000ドルが確固たる下限」との発言の正確な文言や、分析根拠を一次資料で十分に確認できない。
もっとも、価格が下がれば、価格に敏感な現物需要や公的部門の買いが出やすくなるという議論自体は理解できる。ただし、それは特定の価格を絶対に割らないという意味ではない。金利見通し、ドル、投資家の資金フロー、地政学リスクに左右される市場では、支持線とみられた水準も短期間で崩れたり、位置が変わったりする。
長期の支柱は中央銀行の買い
中長期の強気材料として最も明確なのは、公的部門による購入規模だ。ワールド・ゴールド・カウンシルによると、中央銀行の2025年の純購入量は863トン。直前の3年間に続いた年間1,000トン超のペースからは減速したものの、なお歴史的に高い水準だった。2025年の鉱山生産量は過去最高の3,671.6トンに達した。
23
29
2026年についても、四半期ごとの数字だけで傾向を判断するのは早い。第1四半期の推計値が下方改定された後、中央銀行の純購入量は第2四半期に288.9トンへ急回復し、前年同期比62%増となった。上期合計では345トンだった。
19
こうした購入が市場から金を恒久的に消滅させるわけでも、価格を機械的に決めるわけでもない。しかし、長期保有を前提としやすい大口買い手が、宝飾品需要、ETF、個人投資家と金を競合して取得することは、需給の土台を変える。投資需要が戻った局面では、相場が底堅くなりやすい背景となる。
強気シナリオを再び後押しする条件
ゴールドマンの予想修正からは、今後の焦点も読み取れる。
- FRBの利下げへの道筋が明確になること:政策金利の低下期待は、金保有の機会費用という逆風を和らげ、ETFへの資金流入を後押しする可能性がある。
- ドル安または実質金利の低下:いずれも一般に、利息を生まない金の相対的な魅力を高めやすい。
- 中央銀行の積み増し継続:2025年と2026年4〜6月期のデータは、四半期ごとに変動はあっても、公的部門の需要が大きいことを示している。
19
23
- 価格に敏感な現物需要の回復:価格調整や家計の購買環境の改善が、宝飾品、地金、コインの需要を押し上げる可能性がある。アジアの主要市場は特に注目点となる。
「長い踊り場」説のリスク
反対のシナリオも明快だ。高金利とドル高が続き、ETF需要が戻らなければ、金の持ち合いはさらに長期化し、下落幅が広がる可能性がある。中央銀行の購入は重要な支えだが、金融政策や投資家ポジションによる循環的な圧力を打ち消す万能な材料ではない。
要するに、ゴールドマンの4,900ドル予想は「下落が終わった」と断言するものではない。足元では厳しい金利環境を認めつつも、とりわけ公的部門の買いという構造的な需要が、短期的な逆風を上回り得るという中期見通しに基づく目標だ。
1
4