物価変動の影響を除いた実質賃金は同1.6%増となり、5月の改定値と同水準。実質賃金のプラスは6ヶ月連続です 。実質賃金の算出に用いられる消費者物価指数(CPI)は、5月の1.7%から6月は1.9%に上昇しました 。
特に注目すべきは、基本給(所定内給与)の伸びです。6月の基本給は前年同月比3.4%増と、5月の3.0%から加速しました。年初の1月には3%上昇と1992年後半以来の大きな伸びを記録しており、その勢いが続いている形です 。ジャパンタイムズによると、ボーナスや残業代を除いた、より安定したベースの賃金指標も力強い伸びを示しました 。
これらのデータは、日銀が今後数ヶ月のうちに再び利上げに踏み切る根拠を強固なものにしたと、広く受け止められています 。
同じく8月5日に公表された日銀の6月15〜16日開催の金融政策決定会合の議事録では、政策金利を31年ぶりの高水準となる1.0%に引き上げる7対1の投票結果が明らかになりました 。議事録では、多くの委員が物価リスクの高まりに懸念を示し、中には2026年度後半に消費者物価が押し上げられるとの見方や、中東情勢が終結してもインフレ圧力は持続するとの議論があったことが記されています 。
反対票を投じたのは浅田委員のみで、その理由は景気下振れリスクへの懸念でした 。このタカ派的なスタンスは、会合後に公表された「主な意見」でも予兆されていました。そこでは、「中立金利」に向けて「迅速に」金利調整を行う必要性や、田村直樹委員が数ヶ月ごとの利上げを提唱していたことが示されています 。
強い賃金統計とタカ派的な日銀の姿勢が重なり、市場の利上げ期待は大きく変化しました。FXStreetが8月5日に伝えたBBHの分析によると、9月18日の会合で25ベーシスポイント(bp)の利上げ(政策金利1.25%へ)が行われる確率は、賃金統計の発表前の約40%から60%に上昇しました 。
以前の市場はもっと懐疑的でした。7月29日時点の予測市場Polymarketでは、25bp利上げの確率は23.5% 、7月19日時点のChanceIndexでは「現状維持」の確率が88.5%と見込まれていました 。それがわずか数日で60%まで上昇したことは、市場心理の大きな変化を示しています。
BBHは、「政策金利は日銀が中立とみなすレンジ(1.10%〜2.50%)の下限近くにある一方、経済は潜在成長率を上回って稼働している」と指摘し、更なる引き締めの構造的な根拠を挙げています 。
7月下旬、米ドル/円は163〜164円近辺で推移していました(WSJのデータによれば7月29日の終値は163.42円)。ところが8月初旬に入ると、相場は2025年10月以来となる200日移動平均線(200-DMA)を下回る深刻な下落を記録。2025年4月からの上昇トレンドラインも明確に下方ブレイクしました 。
200-DMAの水準は情報ソースによって異なり(下落の勢いが平均線自体を押し下げているためとみられる)、OANDAやTMGMは158円近辺、Barchartは156.80円と算出しています 。介入主導の下落後、この200日線(158円近辺)が戻り売りを誘う即座のレジスタンスとして機能しており 、下値の重要なサポートは155.00〜155.60円近辺と見られています 。
複数のテクニカル情報源は、この動きを「介入主導」、つまり日本および米国当局による共同の売り浴びせであると明確に指摘しています 。
円高は、米国の弱い経済指標によってさらに拍車がかかりました。FXStreetは8月5日、トレーダーが「弱い米国データ」と日銀の利上げ観測の高まりを比較考量していると報じています 。具体的なADP雇用統計やISMサービス業雇用指数の数値はソースから独立に検証できませんでしたが、市場への影響は明らかでした。弱いドル圧力が円高の流れにさらに追い風を与えたのです。
2026年8月初旬、主要なドライバーは全て同じ方向——円高、米ドル/円の下落——に作用しました。
これらの結果、米ドル/円は164円付近から急落し、10ヶ月ぶりに200日移動平均線を割り込みました。タカ派的な日銀の姿勢再評価、力強い賃金統計のサポート、弱い米国データ、そして日米共同介入——全てが円高の追い風となったのです。