さらに別の資料では、2025年9月時点でも受注残は前年比41.2%増と大きく伸びていることが示されている。
CRDMO企業にとって受注残は、将来の売上に転換される契約済み案件を意味する。つまり、製薬企業が依然として新規プロジェクトを同社に委託していることを示す重要な指標だ。
WuXi AppTecの売上の大半を占めるのが**化学サービス事業(WuXi Chemistry)**だ。
この事業は、小分子医薬品の研究・開発・製造をカバーし、創薬初期から商業生産まで幅広い工程を支援する。
最近の業績では、後期臨床試験や商業化段階のプロジェクトが増加したことで収益性が改善。利益率も上昇している。
後期段階の案件は契約規模が大きく期間も長いことが多いため、こうした案件の増加は中長期の安定収益につながる。
投資家向けアップデートでは、顧客活動の活発化も強調された。
主力の化学部門では新規プロジェクト数やアクティブ顧客数が増加しており、世界の製薬企業が引き続き同社のサービスを利用していることが示された。
さらに報道では、海外需要の拡大が業績改善の要因の一つとされており、グローバル製薬企業が同社の重要な顧客基盤であり続けていることが確認された。
CRDMO企業にとっては、研究段階の案件が臨床試験、そして商業化へと進む「パイプライン」をどれだけ多く持つかが将来成長のカギになる。
一方で、WuXi AppTecは米国の政策議論の対象にもなっている。
米議会で提案されたBIOSECURE法案では、WuXi AppTecを含む一部の中国バイオ企業について、米国の連邦資金を受ける機関との取引や遺伝情報の取り扱いを制限する可能性が指摘されている。
しかし今回の投資家説明では、強い受注動向と多様な地域からの需要が示され、市場は「仮に規制が進んでも事業全体への影響は限定的」と受け止めた可能性が高い。
WuXi AppTecの株価上昇は、地政学リスクがあっても企業の基礎的な成長力が市場評価を押し上げる典型例といえる。
今回の投資家アップデートが示したポイントは次の通り。
・受注残は約493億元まで拡大
・主力の化学サービス事業が堅調
・顧客数とプロジェクトが増加
・海外製薬企業からの需要が継続
こうしたデータが、同社が依然として世界の創薬エコシステムの重要なプレーヤーであるという認識を投資家に再確認させた。