台湾は2026年9月の国際半導体展示会「SEMICON Taiwan」を、AIブーム向けのチップを売り込むだけの商談の場にはしなかった。民主主義、法の支配、そして供給の約束を守る能力を、半導体エコシステムの競争力と結び付けて示した。これは、一般に「半導体外交」と呼ばれるアプローチだ。中国政府が台湾を自国の一部と主張し、台湾の対外関係の拡大に反対するなか、米国や欧州との実務的な協力をより深く、持続的なものにする狙いがある。
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「信頼できる供給者」を戦略資産に
頼清徳総統は、台湾の半導体産業の強さは民主主義と法の支配の土台の上にあると述べ、世界への供給に関する約束を守る国際的パートナーだと位置付けた。
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AIチップの安定調達を急ぐ各国政府やテクノロジー企業に対し、台湾は製造能力だけでなく、制度面でも予見可能な供給拠点だと訴えたことになる。SEMICON Taiwanは、AIチップや先端パッケージングを含む半導体集積地としての厚みを見せる舞台にもなった。
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ここでの外交目標は、必ずしも正式な外交承認を求めることだけではない。パートナー各国の技術政策や経済安全保障にとって台湾との協力を不可欠なものにし、関係を実際に積み上げることにある。
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「台湾製」から「台湾と共につくる」へ
AIのサプライチェーンでは、台湾企業が主要海外市場の近くで製造、パッケージング、装置関連などの事業を広げる必要性が増している。台湾のメッセージは、全ての生産を台湾に残すというものではない。台湾企業の技術、人材、取引関係を生かし、パートナーが台湾と共に生産能力を構築するという提案だ。
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海外投資は、商業面でも政治面でも結び付きを強め得る。その一方で台湾にとっては、高付加価値の能力を域内に維持しながら海外展開をどう進めるかが重要な課題となる。海外に生産を広げても、先端半導体の供給網を動かす中核であり続けることが、この戦略の要点だ。
米国の国内生産拡大要求に応える
最も具体的に示されたのが米国への投資である。TSMCは7月、アリゾナ州への投資を追加で1,000億ドル拡大し、米国での計画投資額を総額2,650億ドルにすると発表した。追加の先端半導体製造施設4カ所を含み、先端半導体・先端パッケージング施設は計12カ所となる計画だ。
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また、SEMICON Taiwanで龔明鑫・経済部長は、AI需要を背景に台湾企業が米国でさらに200億ドルを投資する計画だと明らかにした。米商務省の関係者はこれを歓迎したが、台湾側は対象企業や個別案件を公表していない。このため、確定済みの事業一覧ではなく、今後の投資計画として受け止める必要がある。
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こうした投資は、より大きな米台間の貿易・投資上の取り決めとも重なる。2026年1月の合意をめぐる報道では、米国は数千億ドル規模の投資と引き換えに、台湾からの輸入品に対する関税を15%へ引き下げるとされた。
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米国内での能力増強は、台湾企業が米国の産業政策の優先事項に歩調を合わせる手段であると同時に、半導体協力を維持することへの相互の利害を大きくする効果も持つ。
欧州との連携:供給網の強靱化と投資
台湾は欧州との関係強化にもSEMICONを活用した。欧州委員会が2026年6月に提案した「Chips Act 2.0」は、欧州の半導体産業を一段と強化し、戦略的依存を減らすとともに、EU域内の先端半導体生産を支援することを目指す。欧州委は台湾との半導体対話も政策課題として掲げている。
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米国向けの取り組みと欧州向けの取り組みは補完関係にあるが、同じではない。欧州はより強靱な供給網と半導体能力へのアクセスを求め、台湾は広範で長期的な経済協力のネットワークを求める。ロイターによると、欧州委員会の関係者もSEMICON Taiwanに出席し、台湾企業からの追加投資に期待を示した。
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SEMICONで台湾が示した3つの柱
SEMICON Taiwanが台湾を取り巻く地政学上の脆弱性を解消したわけではない。中国政府は台湾の国際的な役割を広げる動きに基本的に反対している。
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ただ、台湾はAIの基盤インフラに欠かせない貢献者であることを示すことで、孤立させることのコストを高めようとしている。戦略は次の3点で成り立つ。
- 信頼:民主的統治と法の支配を、安定供給を担えるという主張の根拠に据える。
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- 能力の共有:米国投資や海外パートナーシップを通じ、AI供給網が生む産業上の利益の一部を共有する姿勢を示す。
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- 中核性の維持:生産の国際分散が進んでも、産業ネットワーク、技術力、先端供給網を調整する力によって台湾の不可欠性を保つ。
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「台湾と共につくる」という言葉が示すのは、この均衡だ。台湾は、他の民主主義国との関係をより深くするために国際展開を進める一方、自国を戦略的に重要にしている能力そのものは空洞化させない、という難しい両立を目指している。