同時に、台湾は圧力の下でも国家主権、尊厳、そして民主制度を放棄しないと強調した。
この発信には二つの狙いがあるとみられる。国内向けには、台湾が大国間外交の「取引材料」になることはないという安心感を示すこと。国際社会向けには、台湾が民主主義を守りながら地域の安定にも責任を持つ姿勢を示すことだ。
頼総統のコメントは、トランプ大統領が習近平主席との会談後に行った発言への事実上の回答と受け止められている。
報道によると、トランプ氏は台湾による独立宣言をけん制する発言をしたほか、約140億ドル(約2兆円規模)の米国による対台湾武器売却計画を、中国との交渉材料として扱う可能性を示唆したとされる。
台湾にとって米国との安全保障関係は防衛の柱であるため、こうした発言は台湾社会に不安を生んだ。
これに対し頼総統は、米国の対台湾武器供与は法律に基づく安全保障上のコミットメントであると強調した。
これは、台湾の防衛支援が単なる外交カードではなく、長年の制度的枠組みに支えられているという点を改めて示す狙いがあるとみられる。
台湾は、米中関係の中でも最も敏感な争点の一つだ。
中国の習近平国家主席はこれまで、台湾問題を米中関係で最も重要かつ敏感な問題だと繰り返し警告してきた。中国政府は台湾を自国領土の一部と位置付けている。
こうした状況の中で、台湾政府は中国からの圧力に対抗しつつも、台湾海峡の緊張を過度に高めないという難しい舵取りを迫られている。
頼総統のメッセージは、強い主張と慎重さの両方を含んでいる。
一方では、台湾が大国間交渉で交換条件のように扱われることを明確に拒否した。他方で、台湾海峡の平和と安定は台湾・米国・そして民主主義国に共通する利益だとも強調した。
この姿勢は、頼政権の基本戦略をよく表している。すなわち、
・防衛力と抑止力を強化する
・民主主義国との連携を深める
・現状維持を保ちながら不必要な衝突は避ける
というバランス戦略だ。
今回の発言は、台湾が直面する地政学的な現実を象徴している。
米国と中国という二大国の競争が激しくなる中で、台湾の指導者は
・国内の民主主義と主権を守る
・北京に対して決意を示す
・同時に地域の安定を維持する
という複雑な課題に対応しなければならない。
頼総統が「台湾の将来は台湾の人々が決める」と改めて強調したことは、台湾が自らの民主主義を基盤に国際社会の中で位置づけを守ろうとする姿勢を示すものとなった。