この点を踏まえると、上期の好調はスマートフォン用ディスプレイ全般の回復というより、iPhoneなどプレミアム端末向けのフレキシブルOLEDに需要が集中した結果と見るのが妥当だ。実際、同じ調査ではフレキシブルOLEDが伸びた一方、リジッドOLEDの出荷は減少している。
ただし、Samsung DisplayとBOEの数字は同じ範囲を示していない。
フレキシブルOLEDに限れば、Samsung Displayは上期にBOEを大きく上回った。一方、LCDを含むパネル全体では、BOEがより大きな総出荷量を持つため首位となる。市場シェアを比較する際は、この集計範囲の違いを見落とせない。
Sigmaintellは、アップルとサムスン電子の新製品が投入される2026年下期に、フレキシブルOLED需要がさらに強まると予想している。市場では、iPhone 18 Proシリーズやアップル初の折りたたみiPhoneの投入が見込まれているが、製品計画は現時点で業界報道や予測に基づくもので、出荷実績が確認されたものではない。
Counterpoint Researchの別の予測では、2026年通年の折りたたみスマートフォン用パネル出荷量は約2,750万枚と、2025年比で約24%増える見通しだ。売上高は約48%増の44億ドル規模となり、通年出荷の約64%が下期に集中すると予測されている。
折りたたみ端末は、通常のスマートフォンよりも高価で技術的な要求が厳しいパネルを必要とする。Samsung Displayについては、アップル初の折りたたみiPhone向けOLEDパネルのモジュール生産開始が承認され、2026年納入分として約300万枚の初期発注を受けたと報じられている。
Samsung Displayは、2021年に一時停止していた韓国・牙山(アサン)第2団地のA7 OLED工場計画を、約5年ぶりに再始動した。2026年8月7日の投資審議委員会で躯体工事を承認し、同月から発注を開始。2027年に本格着工し、2028年初めの完成を目指す。
A7は既存設備を置き換えるのではなく、牙山の生産能力を補完・拡張する位置づけだ。既存の中小型OLEDを担うA3ラインに加え、2026年に量産へ移行した第8.6世代IT OLEDラインも稼働している。A7が完成すれば、スマートフォンや折りたたみ端末だけでなく、ノートパソコンやタブレット向けの大型OLED、XR向けディスプレイまで、複数用途に対応する生産基盤が整うことになる。
Samsung Displayは、2040年までにディスプレイ関連事業へ総額67兆ウォンを投資する計画を示している。投資の中心は、牙山・天安地域における次世代OLEDと高解像度マイクロディスプレイの生産だ。
そのためA7の再開は、特定の製品サイクルだけに対応する短期策ではなく、プレミアムOLEDの需要拡大に備える長期的な能力増強といえる。足元ではiPhoneの好調と折りたたみ市場の拡大が需要を支え、将来的にはスマートフォン、XR、IT機器向けOLEDへ生産の幅を広げる狙いだ。
もっとも、A7の完成は2028年初めの予定であり、短期的な供給制約をすぐに解消する設備ではない。アップルの折りたたみ参入やSamsungの折りたたみ端末が一時的なブームにとどまらず、持続的なパネル需要へとつながるかどうかが、A7投資の成否を左右する。