しかし、この急成長が本当に「機関投資家の採用」を意味するのかについては、アナリストの見方は分かれている。
今回の急増の直接的な要因は、Jupiter LendでUSDe専用のレンディング市場が開始されたことだ。
この統合により、ユーザーは以下のようなことが可能になった。
これによりUSDeはSolanaのトレーディングエコシステムに深く組み込まれ、預入量やオンチェーン取引量が急速に増加した。
レンディングプロトコルでは、同じ担保が複数のポジションで再利用されることが多いため、比較的小さな資金流入でもTVL(預かり資産総額)や流動性指標が大きく膨らむという特徴がある。
今回のローンチで特に注目を集めたのが、資産運用会社 Bitwise の関与だ。
Jupiter Lend上では、Bitwiseがキュレーションする機関投資家向けの分離型レンディングプールが用意されたと報じられている。
この構造では、Bitwiseが以下のような役割を担うとされる。
その目的は、スマートコントラクトやカウンターパーティーリスクへの懸念を抑え、より機関投資家が参加しやすいDeFi環境を作ることだとされる。
さらに、Solanaへの資金流入を支えるインフラ面でも動きがあった。ブリッジプロトコルの送金上限が一時的に引き上げられ、増加する資金移動に対応したと報じられている。
USDeは設計上、レバレッジ取引と相性が良いステーブルコインといえる。
Ethenaの仕組みは、デリバティブ市場を利用したデルタニュートラル戦略によって利回りを生み出すモデルを採用している。
Jupiter Lendでは、例えば次のような戦略が可能になる。
このような 「ループ戦略」 はDeFiでは一般的で、利回りが魅力的な場合、預入額やステーブルコイン需要が短期間で急増する傾向がある。
今回のSolana拡張は、Ethenaにとって追い風のタイミングでもあった。
オンチェーンデータでは、ウォレット数や大口取引が増加し、約3か月ぶりのネットワーク成長が記録されたと報じられている。
さらに、資産運用会社 Grayscale が ENAトークンをDeFiファンドに組み入れたことも、機関投資家の関心を高める材料となった。
こうしたニュースが重なり、「Ethenaは機関投資家向けインフラへ進化している」という市場ストーリーが強まった。
強い資金流入にもかかわらず、一部のアナリストは今回の急成長を長期的な機関採用の証拠と見るのは早いと指摘する。
主な理由は次の通りだ。
DeFiでは、資金はより高い利回りを求めて頻繁に移動する。もし今回の流入がレバレッジ戦略やインセンティブに依存しているなら、条件が変われば急速に流出する可能性がある。
実際、過去にはUSDe供給量がわずか1か月で40%以上減少した例もあり、市場環境の変化が需要に大きく影響することが示されている。
レンディング市場では担保が再利用されるため、実際の純資金よりもTVLが大きく見えることがある。
つまり、表面上の流動性増加が必ずしも新規資金の流入を意味するわけではない。
暗号市場ではステーブルコイン供給量が増えている一方で、DeFiのTVLが同じペースで増えていないという指摘もある。
これは資金が長期投資ではなく、短期の取引戦略やレバレッジに使われている可能性を示唆する。
USDeの利回りモデルは、デリバティブ市場の資金調達率や取引活動に強く依存している。そのため市場のリスク選好が弱まれば、需要が急減する可能性もある。
今回のSolanaでのUSDe急成長は、トレーディング担保としてのステーブルコイン需要が非常に強いことを示した。
Jupiter Lendとの統合と、Bitwiseによる機関向け市場の構築は、Solana DeFiに新しい資金チャネルを生み出した可能性がある。
ただし、本当に機関投資家の採用が進んでいるかどうかは、初期の利回り機会やレバレッジ需要が落ち着いた後でも資金が残るかどうかで判断されるだろう。
もし預入が維持されれば、USDeはSolanaの金融インフラの一部として定着する可能性がある。逆に資金が急速に流出すれば、今回の急増はDeFiでよく見られる短期的な流動性サイクルだったと評価されるかもしれない。