これまでのDell AI Factoryは、主にNVIDIA GPUを搭載したサーバーなど計算基盤(コンピュート)中心のソリューションでした。
2026年の発表では、そこに以下の要素を統合し、AI運用を支える包括的インフラスタックへと拡張しています。
Dellによると、AI Factoryはすでに5,000以上の顧客に導入されており、この既存顧客基盤をもとにより大規模なAI環境を展開していく狙いがあります。
今回の目玉となる新製品が Dell PowerRack です。
これはAI向けインフラをラック単位で統合したシステムで、従来のように企業が個別にサーバー・ネットワーク・ストレージを組み合わせて構築する必要を減らす設計になっています。
PowerRackの特徴は次の通りです。
このアプローチは近年のAIデータセンターで広がる**「ラックスケールアーキテクチャ」**の考え方に沿っています。サーバー単位ではなく、ラック全体を1つのAI計算ユニットとして導入するモデルです。
AIシステムでは、モデルそのものよりも巨大なデータセットの管理が大きな課題になります。
Dellはその対策として、オブジェクトストレージ Dell ObjectScale X7700 を発表しました。
この新システムは
といった特徴を持ち、大規模AIデータセットの管理を効率化することを目的としています。
同時にDellはAI Data Platformも拡張し、データインデックスや分析処理の性能向上などを追加しました。これにより、膨大な非構造化データを扱うAIワークフローを高速化する狙いがあります。
最新のAIクラスターでは、GPU密度の増加により電力と発熱が急増しています。
DellはAI Factoryの拡張で、液体冷却(リキッドクーリング)技術を強化しました。これはNVIDIAの次世代GPUアーキテクチャ「Blackwell」など、高密度アクセラレータの冷却要件に対応するためです。
GPU数が増え続けるAIシステムでは、従来の空冷だけでは効率的に熱処理できないケースが増えており、液冷はデータセンターの新しい標準になりつつあります。
Dellは今回、**Agentic AI(エージェント型AI)**も重要なテーマとして掲げました。
その例として発表されたのが Dell Deskside Agentic AI です。これはワークステーションベースの環境で、NVIDIAのNeMoソフトウェアなどを利用しながら自律型AIエージェントの開発・実行を行えるシステムです。
特徴は、AIエージェントを企業の内部インフラで実行できる点です。これにより、機密データをクラウド外部に送らずにAI処理を行える可能性があります。
またDellはAIエコシステムも拡張し、以下の企業との連携を強化しています。
これにより、主要なAIモデル、フレームワーク、企業向けソフトウェアをDellインフラ上で直接実行できる環境を整える狙いがあります。
今回の発表はDell Technologies World 2026で行われました。
ただし、公開されている情報では
などの正式な一般提供時期(GA)、価格、出荷スケジュールは広く公開されていません。
今回の動きは、Dellのビジネスモデルの変化を示しています。
これまでDellは主にサーバーなどのハードウェアを販売してきましたが、AI Factoryの拡張により、次のような統合型AIプラットフォームを提供する方向に進んでいます。
この構成により、企業は個別のコンポーネントを統合する必要がなくなり、AI実験から本番運用への移行を加速できるとDellは説明しています。
また、オンプレミスやハイブリッド環境でAIを運用したい企業にとって、PowerRackのような統合インフラはクラウド依存を減らす選択肢にもなります。
言い換えれば、AIの次の競争はGPU単体ではなく、計算・データ・ストレージ・インフラを一体化したAIプラットフォームで決まるという見方が強まりつつあるのです。