パンデミック後のラグジュアリー需要の急拡大のあと、多くのブランドが価格引き上げを続けた結果、2024年には需要の伸びが鈍化していた。シャネルの2025年の成長は、その流れの中での「安定化」を示す結果だった。
また、営業利益は約47億ドルへとわずかに改善し、継続的な店舗投資を続けながらも収益性を維持した。
回復の最大の要因とされるのが、クリエイティブディレクターに就任したマチュー・ブレイジーのアプローチだ。
彼はブランドを大きく変えるのではなく、シャネルの象徴的なアイテムを現代的にアップデートした。
主な対象となったのは次のような定番商品である。
こうした“シャネルらしい”アイコンを刷新した結果、需要が供給を上回る商品も出たと報じられている。
ラグジュアリーブランドでは、まったく新しい商品よりも歴史ある定番の進化版のほうが顧客の関心を集めやすいとされるが、今回の成功はその典型例といえる。
もう一つの重要なポイントは、新規顧客の獲得だった。
報道によると、ブレイジーのデザイン刷新によってこれまでシャネルを買ったことがない消費者が店舗に来店し、売上回復に貢献したという。
ラグジュアリー業界では近年、成長の鍵が次の2つにあると指摘されている。
新規顧客がブランド体験を始めると、将来的にバッグ、シューズ、ジュエリーなど複数カテゴリーで購入が続く可能性が高いため、長期的な価値が大きい。
シャネルは他のブランドと比べて流通を厳格に管理する戦略で知られている。
特に重要なのは、次の点だ。
このため顧客は店舗に足を運ぶ必要がある。例えば、高級レザーフラップバッグ(約8,250ユーロ)やバレエシューズ(約960ユーロ)などの新商品は、店舗での購入体験を通じて販売されている。
この戦略は
といった点で、ラグジュアリー企業にとって重要な仕組みになっている。
シャネルは近年、世界各地でブティックの新設や改装に投資を続けている。
ラグジュアリー業界では店舗が単なる販売場所ではなく、
として重要視されている。
そのため、多くの高級ブランドが大型旗艦店や店舗リニューアルに巨額投資を行っている。
2025年はラグジュアリー業界全体にとって簡単な年ではなかった。シャネルの回復を理解するには、競合との比較が参考になる。
世界最大のラグジュアリーグループLVMHは、2025年売上808億ユーロを記録したが、
となり、需要の減速が業績に影響した。
一方、**エルメス(Hermès)**は業界でも突出した強さを維持した。
2025年は
営業利益率は**約41%**と、世界のラグジュアリー企業でも最高水準となっている。
この比較から見えるのは、シャネルの位置だ。
つまり、**2025年のシャネルは「急成長」ではなく「回復と安定化」**のフェーズにあると言える。
シャネルの2025年の動きは、現在のラグジュアリー市場の重要なトレンドを示している。
世界のラグジュアリー市場が減速する中でも、ブランドの歴史とデザイン革新をうまく組み合わせれば需要は回復できる。
2025年のシャネルは、その好例となった。