ビットコインの8月の急騰は力強かった。しかし、その最初のエンジンは市場参加者の判断による新規の買いというより、デリバティブ市場で積み上がっていたショートポジションの強制決済だった。
ビットコイン(BTC)は数日のうちに約6万2,800ドルから8万ドルまで上昇。弱気ポジションの清算に加え、米国の現物ビットコインETFへの資金流入や、長期米国債利回りの低下も上昇を後押しした。
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この組み合わせは市場構造の改善を示す一方、ビットコインがすでに自律的な強気相場へ移行したことを証明するものではない。価格が上昇するなかで先物の建玉は減少し、月末にはETFフローも反転したためだ。9月の焦点は、短期的でいずれ尽きる清算の燃料を、持続的な現物需要が引き継げるかにある。
急騰の起点となったショートスクイーズ
8月19日、ビットコインは約8%上昇し、わずか1時間ほどで10億ドルを超えるBTCのショートポジションが清算された。暗号資産市場全体では、24時間のショート清算額が約27億ドルに達し、ロングとショートを合わせた清算額は約29億9,000万ドルと報じられた。
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集計期間やデータ提供会社によって数字には多少の差がある。ただ、市場に大量の弱気なデリバティブポジションが蓄積していたという方向性は共通している。
ビットコインが上昇して清算価格を超えると、取引所はショートポジションを強制的に閉じる。ショートを解消するにはBTCを買い戻す必要があるため、価格が上がっている局面で追加の買い需要が発生する。これがさらなる上昇と追加清算を呼ぶ、いわゆるショートスクイーズだ。
つまり今回の上昇は、同規模の新規買いが一度に流入しなくても、ショート勢が買い手へ転じることで加速できた。抵抗線が次々と突破され、BTCは6万ドル台前半から8万ドル付近へ駆け上がった。
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建玉減少が示す「レバレッジ主導ではない上昇」
デリバティブ市場のデータは、今回の上昇が新たな強気レバレッジの積み上げよりも、ポジション解消を伴うデレバレッジによって進んだことを示している。
ビットコイン先物の未決済建玉は、8月14日の約64万5,760BTCから、8月25日には58万7,584BTCまで減少した。その間、BTC価格はおよそ6万2,000ドルから8万ドル近くまで上昇している。
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価格上昇と建玉減少が同時に起きる相場は、ロングポジションが過度に膨らむ上昇より、一般に健全とみられやすい。今回の局面では、過剰な弱気ポジションが整理され、同程度の過熱したロングへ置き換わらなかったためだ。確認されたデータでは資金調達率も比較的抑制され、一部の市場指標では中立またはマイナス圏に近づいていた。
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ただし、デレバレッジには限界がある。ショート勢が一通り退場した後も上昇を続けるには、現物市場での実需が必要になる。建玉の減少は、8月の上昇が大量のレバレッジ・ロングによるものではなかったことを裏付ける一方、最初のショートスクイーズだけで無限に上昇できるわけではないことも意味する。
ETF買いが現物市場の下支えに
米国の現物ビットコインETFには、8月後半に強い資金が流入した。ある集計では、8月27日まで9営業日連続の流入となり、合計額は約30億4,000万ドルに達した。
50別の集計では、同日までの8月の純流入額を約35億2,000万ドルとしている。
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集計額が一致しないのは、データの締め日や集計方法が異なるためだ。8月25日時点の流入額として約27億2,000万ドルとする報道もある。
61これらの数字を同一の統計として扱うことはできないが、いずれも「上昇局面でETF買いが相当規模に達していた」という大筋を示している。
ETFからの資金流入は、ショート清算による一時的な買い戻しに、現物市場の買い需要を加えた。これが上昇を単なる清算連鎖で終わらせず、一定期間持続させる土台になったと考えられる。
ただし、資金流入は月を通じて一様ではなかった。8月28日、米国の現物ビットコインETFは約2億180万ドルの純流出となり、9営業日連続の流入が途切れた。
521日の反転だけで機関投資家の需要が長期的に変化したとは判断できないが、流出が続けば上昇を支えた重要な買い手が弱まることになる。
米国債買い戻しは追い風。ただし金融緩和ではない
米財務省は、長期の名目利付国債を対象とする流動性支援目的の買い戻しオペレーションについて、1回あたりの上限額を少なくとも倍増すると発表した。10~20年債と20~30年債のセクターが対象で、上限は従来の20億ドルから少なくとも40億ドルへ引き上げられる。実施期間は9月9日から11月4日までとなる。
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発表後、長期米国債利回りは低下した。
18長期金利が下がれば、金利変動の影響を受けやすい資産や、ビットコインを含むリスク資産にとって、金融環境の一部が緩和される可能性がある。
もっとも、これは中央銀行による直接的な金融緩和とは異なる。米財務省の買い戻しは、特定の国債市場の流動性を支える措置だ。入手できる報道から、これがビットコインのさらなる上昇を保証すると結論づけることはできない。
8月の相場における位置づけは、すでにショート清算が起きやすい状態にあった暗号資産市場へ、好意的なマクロ要因が重なった、と捉えるのが適切だろう。
9月の見通しが分かれる理由
強気シナリオ
強気シナリオを支える条件は、主に3つある。
- 8月28日の流出後も、ETFへの資金流入が再開すること
- 過剰なレバレッジを再構築せず、ビットコインがショートスクイーズ後の上昇分を維持すること
- BTCが上値抵抗帯を一時的に上抜くだけでなく、継続的な買いを伴って突破すること
現物ETFへの流入が再び増え、先物ポジションが抑制されたままなら、清算主導だった初動よりも強い上昇構造と評価できる。8月28日には、ビットコインETFが反転する一方で、イーサリアム、XRP、ソラナのETFには資金が流入していたとの報道もある。
60暗号資産関連商品全体への資金配分が続く可能性は残っている。
最大のテクニカル上の壁
短期的に最も重要な試金石は、8万1,000~8万3,000ドル付近だ。50週移動平均線は約8万1,081ドル、過去のスイング高値は約8万2,850ドルと報告されている。
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上昇局面でBTCは8万1,000ドル付近で跳ね返されており、この水準は単なるチャート上の目安ではなく、実際に売りが出た抵抗帯になっている。
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このゾーンを終値ベースで明確に上抜き、その後も買いが続けば、8月の反発がより大きなトレンドへ移行している証拠になる。反対に、同じ水準で何度も押し戻されれば、ショートスクイーズ後の反落余地が残る。
弱気シナリオ
弱気シナリオは、ブレイクアウトの失敗と現物需要の鈍化から始まる。ETFからの流出が続けば、上昇局面で売りを吸収してきた主要な買い手が弱まる。その後、近隣のサポートを割り込めば、利益確定売りや新たなショートポジションの構築を誘発する可能性がある。
資金配分の相対的な変化もリスクだ。投資家が新たなビットコイン投資を増やすのではなく、イーサリアムなど別の暗号資産へ資金を移せば、暗号資産市場全体が堅調でもBTCは相対的に出遅れる可能性がある。これは暗号資産への需要が崩壊したことを必ずしも意味しないが、ビットコインのブレイクアウトは維持しにくくなる。
9月に確認すべきポイント
ビットコインが一時的に8万ドルを超えられるかどうかだけでは、相場の強さは判断しにくい。重要なのは、ショートスクイーズを持続的な現物主導の需要へ転換できるかどうかだ。
ETFへの純流入が続き、8万1,000~8万3,000ドルを明確に上抜ければ、より大きな上昇シナリオが強まる。反対に、ETF流出が再開し、その抵抗帯で再び失速するなら、急騰後の深い押し目が現実味を増す。
現時点での結論は、強気一辺倒でも弱気一辺倒でもない。8月の急騰は確かな上昇だったが、加速の主因は強制的なショートカバーだった。ETF需要と米財務省の発表が相場を支え、先物建玉の減少は新たなレバレッジが主役ではなかったことを示している。
9月は、ショート清算という一時的な燃料が尽きた後も、ビットコインが上昇を続けられるかを試す月になる。