今回の上昇は、個別企業の業績サプライズというより、AIインフラ関連銘柄全体の評価見直しと見るのが自然です。Anthropicの決算が変えたのは、同社の顧客やAI関連業界が今後どれだけインフラを購入するかという見通しであり、その支出の受け皿となる上場企業に買いが波及しました。
ただし、恩恵の大きさは企業ごとに異なります。ASMLや半導体製造装置メーカーは、半導体メーカーの設備投資により直接的に連動します。一方、STマイクロやInfineonは自動車、産業機器などにも事業基盤を持つため、AI市場が強くても、他の市場の減速リスクがなくなるわけではありません。
半導体株の上昇は、欧州株式市場全体が比較的明るい地合いにあったタイミングとも重なりました。Stoxx 50は約0.3%、欧州株全体を幅広くカバーするStoxx 600は約0.2%上昇し、いずれも最近の高値圏で推移しました。世界的な株高に加え、中東情勢の動向が注視されるなかで、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利上げするとの見方が後退したことも、投資家心理を支えました。
資源株も堅調で、Antofagasta、Hochschild Mining、Glencoreはいずれも2%超上昇しました。 一方、ドイツのソフトウエア大手SAPは0.8%下落しており、欧州の大型テクノロジー株が一律に買われたわけではありません。
このため、Anthropicの決算は半導体株にとって重要な材料でしたが、株価の上昇幅は市場全体のリスク選好にも押し上げられたと考える必要があります。
さらに、将来の巨大市場を前提にした評価も進んでいます。Reutersによると、Anthropicは新規株式公開(IPO)の可能性を視野に入れるなか、2028年の売上高をおよそ1900億〜2000億ドルと予想しています。
ただし、これは実績ではなく予測です。強気シナリオに織り込まれた成長規模を示す一方、Anthropicが今後達成すべきハードルも大きく引き上げます。半導体メーカーや装置・材料サプライヤーにとっても同じことが言えます。AI企業が計算能力を増やし続ければ恩恵を受けられますが、成長期待を先取りして株価が上昇している銘柄ほど、AI投資の減速や収益化の未達に弱くなります。
Anthropicの1四半期の決算だけで、AIインフラ投資が今後も永続すると証明されたわけではありません。しかし、少なくとも大手AI開発企業の一社が、AIへの需要を非常に大きな売上高とプラスの調整後営業利益へ転換しつつあることを示す、説得力のある材料にはなりました。
欧州半導体株にとっての含意は明確です。企業がAIサービスへの支出を継続するなら、そのサービスを支える半導体、製造装置、先端パッケージング技術、材料を供給する企業には、息の長い需要が生まれる可能性があります。
今回の上昇は、その供給網への信頼が高まったことを反映しています。一方で、その前提には、暫定的な決算数値と非常に野心的な将来予測があります。AIの収益化が期待に届くか、そして顧客の設備投資が続くかが、次の焦点になります。