金の上昇を支えているのは、単一の買い手ではない。中央銀行など公的部門による記録的な購入に加え、金ETFへの資金流入が戻り、外貨準備を「どこに、どれだけ機動的に置くか」への関心も高まっている。
ただし、これらは価格が一直線に上がることを意味しない。直近の最大の焦点は米国のインフレ指標と米連邦準備制度理事会(FRB)の判断であり、金利見通し、実質利回り、ドル相場を通じて金価格を大きく動かし得る。
公的部門の買いは急加速
2026年4〜6月期に中央銀行など公的部門が純購入した金は288.9トン。前年同期比で62%増、改定後の1〜3月期の約5倍で、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の統計では第2四半期として過去最高だった。
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購入は特定の一国に限られない。報告ベースではポーランドが51トンで最大の買い手となり、中国は33トンを購入。ウズベキスタンとカザフスタンも相応の規模で積み増した。一方、ロシアとトルコは純売りだったが、合計の公的部門買いを相殺する規模には至らなかった。
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高値圏でも外貨準備の分散需要が維持されたことを示す数字ではある。ただし、すべての中央銀行が同じペースで買い続ける証拠ではない。WGCによると、1〜6月期全体の需要は2022年以来の低水準だった。
38 それでも4〜6月期の急増は、短期的な投機資金とは異なる、金相場の下支え要因といえる。
オランダのロンドン移管は「買い」ではない
オランダ中央銀行(DNB)は地政学的な緊張の高まりと危機対応を理由に、2026年3月から8月にかけてニューヨークとオタワからロンドンへ約86トンの金を移した。これにより、オランダの金準備に占めるロンドンの比率は18.1%から32.1%へ上昇し、ニューヨークとオタワの比率はそれぞれ18.5%へ低下した。
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市場への読み方で重要なのは、これは主として保管場所と流動性の見直しであり、新たに86トンを買い増したわけではない点だ。移管の多くはニューヨークで金を売却し、ロンドンで買い戻す方法で実施され、実際に物理的に移送された量は27トン超だった。
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従って、この取引自体が世界の金供給を減らしたり、純需要を新たに生んだりするわけではない。ただ、DNBは深刻な危機でロンドン保管の金の方が売買・活用しやすいと説明している。
1 地政学リスクが高まる局面で、準備資産は保有量だけでなく「すぐ使えるか」も重視されることを示す事例だ。
ETF資金流入が第2の需要源に
8月には投資需要も明確に改善した。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによると、現物金価格が月間9.7%上昇するなか、米国上場の金ETFには79億ドルの資金が流入した。月間の現物価格上昇率は3月以来の大きさだった。
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ETFの資金フローは、中央銀行の買いよりも価格やマクロ環境に敏感になりやすい。利回り上昇やドル高、利益確定があれば流出に転じる可能性もある。それでも8月のデータは、公的部門の需要だけでなく、投資家の参加も戻ってきたことを示している。
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次の方向を決めるのはCPIとFRB
短期の金価格は、引き続き金利見通しと密接に結び付いている。8月には弱い米雇用統計を受けてFRBの早期利上げ観測が後退し、金は上昇した。その後も、米国債利回りとドルの低下が金の急騰と重なった。
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9月15〜16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、注目すべきシナリオは次の通りだ。
- インフレ鈍化、またはFRBが想定よりハト派的な姿勢:予想利回りやドルを押し下げ、最近の金相場を支えた環境が続く可能性がある。
- インフレの上振れ、またはタカ派的なFRBのガイダンス:政策金利見通し、実質利回り、ドルを押し上げる方向に働き、利息を生まない金には逆風となり得る。
- 市場予想どおりの結果:明確な方向感が出ず、投資家のポジション、ETFフロー、地政学情勢が相場を左右しやすい。
9月3日時点で、現物金は1トロイオンス当たり約4,493ドルと報じられた。8月には4,100ドル割れから約4,650〜4,700ドルまで上昇した後、月末は約4,400ドルで終えた。
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18 値動きの大きさは、構造的な支援材料があっても、短期では急反落が起こり得ることを物語る。
見通し:前向きだが、楽観一辺倒ではない
中央銀行の積み増しとETFへの資金流入が続くなら、中期的な金の地合いは良好だ。4〜6月期の記録的な公的部門の購入は重要な需要基盤であり、オランダの保管移管も、危機時の流動性を備えた準備資産として金が重視されていることを示す。
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一方で、短期の見通しは「強気寄りだが油断はできない」と表現するのが妥当だろう。オランダの移管は供給ショックではなく、高値圏にある金は利益確定売りにもさらされやすい。次の大きな値動きを判断するには、米CPIのサプライズ、FRB見通しの変化、実質利回り、ドル、そして8月に急増したETF流入が続くかを注視したい。
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