影響を受けた主なライブラリには次のようなものがあります。
size-sensorecharts-for-reacttimeago.js@antv/*これらのパッケージは多くのフロントエンドツールや可視化ライブラリの依存関係になっているため、下流のプロジェクトへ連鎖的な影響が生じる可能性がありました。
Microsoftによる分析でも、@antv エコシステムの侵害は依存関係を通じて他のプロジェクトへ波及し、echarts-for-react のように週100万回以上ダウンロードされるパッケージが影響範囲を拡大させたと指摘されています。
改ざんされたパッケージには、難読化されたJavaScriptペイロードが埋め込まれていました。
このコードはnpmの preinstall スクリプトなどのインストールフックを利用し、依存関係をインストールする際に自動的に実行されます。つまり、開発者やCI環境が通常通り npm install を実行するだけでマルウェアが動作します。
研究者はさらに、攻撃者が別の配布方法も使っていたことを確認しています。
それは optionalDependencies を利用し、GitHubの特定コミットSHAを参照させる方法です。
npmはGitリポジトリからコミット単位でコードを取得できるため、攻撃者はフォークされたリポジトリのオブジェクトを利用して、公式プロジェクトに書き込み権限がなくても悪意あるコードを取得させることができました。
このマルウェアの主な目的は**認証情報の窃取(credential harvesting)**です。
感染すると、開発環境やローカルマシンをスキャンして次のような機密情報を探します。
さらに、以下のようなパスワードマネージャーのローカルストアからもデータを抽出しようとします。
passgopass など 盗んだデータは、GitHubリポジトリ内のGitオブジェクトとして保存する方法や、テレメトリー通信に見せかけたHTTPS通信で外部に送信する方法で持ち出されました。
Mini Shai‑Huludは単なる情報窃取マルウェアではありません。
研究者によると、この攻撃は**自己拡散型(self‑propagating)**の特徴を持っています。
盗んだ認証情報を利用して、例えば以下のような活動を試みます。
つまり、感染した開発者環境自体が次の攻撃の出発点になる可能性があります。
今回の事件より少し前の2026年5月上旬にも、同じキャンペーンの攻撃が確認されています。
そのターゲットは、Reactなどで広く使われるフロントエンドライブラリ群 TanStack でした。
改ざんされたTanStackパッケージには、CI/CDシステムや開発環境の認証情報を盗むコードが埋め込まれており、攻撃者がさらに別のプロジェクトへ侵入する足掛かりを作る仕組みになっていました。
このTanStack攻撃は、企業の開発環境にも影響を及ぼしました。
OpenAIは後に、社内の従業員2人の端末がこの依存関係を通じて影響を受けたと発表しています。
マルウェアはそれらの端末からアクセス可能な社内リポジトリに対して、認証情報の窃取を試みる活動を行っていました。
ただしOpenAIによる調査では次の点が確認されています。
同社は影響を受けた端末を隔離し、セッションの失効、認証情報のローテーション、デプロイメント権限の制限、コード署名証明書の更新などの対策を実施しました。
Mini Shai‑Huludは、現代のサイバー攻撃がユーザーではなく開発エコシステムそのものを標的にしていることを示しています。
このキャンペーンが特に危険視される理由は次の通りです。
現在のソフトウェアは膨大なオープンソース依存関係の上に成り立っています。そのため、人気パッケージが短時間でも侵害されれば、数千〜数万のプロジェクトに影響が及ぶ可能性があります。
Mini Shai‑Hulud事件は、アプリケーションだけでなく、開発ツール・パッケージ管理・CIパイプラインを含む「ソフトウェア供給網」全体の防御が重要であることを改めて示しました。