中国の大手テック企業の中でも、最も積極的にインフラ投資を進めているのがアリババだ。
同社は 3年間で約3800億元(約560億ドル) をAIデータセンターやクラウド計算基盤、モデル学習環境の整備に投じる計画を掲げている。CEOの呉泳銘(エディ・ウー)氏は、AI需要が加速すれば この投資額を上回る可能性もある と示唆している。
この戦略では、AIインフラを短期的な利益源ではなく 長期の戦略資産 として扱う。クラウド事業はすでに同社の成長エンジンの一つになっており、AI関連クラウドサービスの拡大が売上を押し上げている。
ただし、この「先行投資型モデル」にはコストも伴う。AIとクラウドへの巨額投資により利益率は圧迫され、業績面では弱い結果につながったとの指摘もある。
言い換えると、アリババは 中国版のAIインフラ企業 を目指している。米国でAmazonやMicrosoftがクラウド基盤を押さえて巨大な市場支配力を築いたのと似た戦略だ。
一方、テンセントはより慎重で段階的なアプローチを取っている。
同社は巨大なインフラ投資を先に行うのではなく、まず 既存のデジタルエコシステムにAIを組み込む ことに重点を置いている。対象は広告、ゲーム、コンテンツ、企業向けクラウドサービスなどだ。
テンセントの2026年第1四半期の売上は 1964.6億元(前年比9%増)。同期間の設備投資は 319.4億元(前年比16%増) に拡大し、その一部はAI関連需要の増加に対応するためのものだった。
経営陣は2026年後半にAI投資がさらに増える見通しを示しており、クラウド上でのAIワークロード需要が強まるにつれて計算インフラも拡張する計画だ。
つまりテンセントは、アリババのような「インフラ先行」ではなく、 サービスと収益化の機会に合わせてAIを拡大する戦略 を採っている。
一見すると、売上が市場予想に届かなかったタイミングで設備投資を増やすのは矛盾しているようにも見える。
しかし両社の経営陣は、AI向け計算力を 単なるコストではなく戦略的な制約 と捉えている。現在、AIモデルの学習や推論に必要なGPUやデータセンター容量は需要に追いついておらず、計算力を確保できなければ将来の市場機会を逃す可能性があるためだ。
つまり、AIインフラの拡張は「利益が出たら投資する」性質のものではなく、 競争に遅れないための必須投資 とみなされている。
この投資競争を加速させているもう一つの要因が 国産半導体の存在 だ。
米国の輸出規制によりNvidiaの最先端AIチップへのアクセスが不透明な中、中国企業はHuaweiのAIプロセッサや、アリババの半導体部門「T-Head」が設計したチップなどを活用し始めている。
こうしたチップは、最先端のモデル学習では依然として性能差があるとされるものの、次のような用途では重要な役割を果たす。
結果として、中国のクラウド企業は Nvidiaへの完全依存なしでもデータセンターを拡張できる環境 を徐々に整えつつある。
アリババとテンセントの動きは、中国AI産業の異なる戦略を象徴している。
共通しているのは、AIの成長が 計算力の供給量に強く依存している という認識だ。
国産チップの供給が拡大し、国内ハードウェアに合わせたデータセンター設計が進めば、中国のAIインフラ整備は今後さらに加速する可能性がある。
最終的に勝敗を分けるのは、こうした巨大投資を どれだけ早く商業サービスや企業導入につなげられるか にかかっている。