クッシュマン&ウェイクフィールドのアジア太平洋(APAC)データセンター投資比較で、シンガポールの「開発利回り(yield on cost)」は16.6~18.8%と報告されました。地域の報告レンジである7~13%を上回り、同社の調査ではシンガポールは統計上の外れ値とされています。
7
ただし、この数字を投資家が実際に得る収益率と同一視することはできません。また、利回りの高さの理由を、数字だけから断定することもできません。
地域の比較で際立つシンガポール
同社の調査はAPACの14市場を対象に、人口、設備投資額(CapEx)、開発利回りなどの基礎指標を比較しています。
13 その中で、シンガポールの16.6~18.8%という開発利回りは、報告された地域レンジの7~13%を大幅に上回ります。
7
ここでいう開発利回りは、データセンター開発を比較するための指標です。投資家が最終的に得るリターンを示すものでも、将来の収益を約束するものでもありません。さらに、シンガポールが外れ値であることは示されていますが、その背景をこの指標だけで説明することはできません。
APAC市場は拡大、ただし地域全体の数字
クッシュマン&ウェイクフィールドは、AIの導入、クラウドの拡大、企業のデジタル化、デジタル主権に関する取り組みを、APACでデータセンター投資を押し上げる要因として挙げています。同社は2030年までに、地域で新たに必要となる投資額が2,800億米ドルを超え、稼働中のデータセンター資産価値が9,500億米ドルを上回ると予測しています。
1
2
別の同社資料によると、APACの開発パイプラインは2026年上半期に26.5GWとなり、このうち約4.8GWが建設中、約21.7GWが計画段階でした。同期間、コロケーション施設の空室率は2025年下半期の10.9%から10.3%に低下しています。
19
これらは地域市場全体の動向を示す数字です。シンガポールの利回りが高い理由や、特定の要因がその利回りを生んだことを、直接裏づけるものではありません。
数字から言えること、言えないこと
現時点で確認できる結論は、シンガポールの報告利回りがAPACで最も高く、地域の報告レンジを大きく上回っていることです。
7
一方、人口当たりの容量、各市場の設備投資額、建設費、賃料、資金調達案件や個別の予測などについては、ここで確認できる資料だけでは、追加の比較や説明を裏づける情報が十分ではありません。利回りの数値から、供給不足や高い需要などの原因を確定的に導くことはできません。
市場を比べる際は、見出しとなる利回りと、その背景を説明する根拠を分けて捉えることが大切です。シンガポールの数字が示すのは、報告上の際立った利回りです。その理由を知るには、市場ごとの供給、需要、コストなどを別途確認する必要があります。